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世界の景気後退懸念がコモディティ市況を下落させています。WTI原油価格は今年1バレル130ドル台まで高騰する局面がありましたが、足元では90ドルを割りこむところまで売り込まれています。米国の利上げなど引き締め策の効果とも言えますが、ロシアのウクライナ侵攻による上昇分はすべて剥落した形です。ここからの原油市況にリスクはないのでしょうか。


皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今日は経済産業研究所コンサルティングフェロー藤和彦氏をお迎えし
まだ原油マーケットに織り込まれていない新たなリスクについて解説いただきました。

まずは、足元の下落の一因ともなっているイラン核合意問題。
イラン核合意の再建に向けた米国とイランの間接協議が再開されており、
合意が成立してイラン産原油が国際市場に復帰するとの期待が高まっています。
米国は、2015年イラン核合意の再建に向けEUが提案した合意の最終文書について、
EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表に内密かつ直接回答を
伝える方針であると明らかにした、と報じられていますが、
条件としてイラン政府が「本題から外れた要求」を放棄することだと指摘しています。

イラン側は将来の米大統領がトランプ前大統領のように合意を
破棄しないという保証を求めているのですが
これを米国は受け入れるとは考えにくい。
原油価格が下落基調に入っており、米国としても
イラン側に譲歩してイラン核合意再建を急ぐ理由が薄れています。
今、この時期に話がまとまるとは考えにくいと藤氏は指摘されています。

そして新たな火種は中東産油国。

まずはイラク。
昨年10月の議会選でイスラム教シーア派指導者ムクタダ・サドル師派が
最大勢力となりましたが、イスラム教スンニ派やクルド系などとの
協議が行き詰まリ、政治空白が続いています。
7月27日、サドル師を指示する群衆が国会議事堂を占拠する事態に発展しています。

イラクの政治システムはこれまでシーア派、スンニ派、クルド系で
権限を分け合う形で成り立ってきましたが、
若者を中心に不満が急速に高まっており20年頃から
抜本的な政治改革を求めるデモを繰り返すようになっています。

そんな中での政治空白で不測の事態が原油生産を滞らせることがあれば
原油市況に与えるインパクトは甚大です。
イラクはOPEC原油生産量2位(産油量日量450万バレル)



そしてサウジアラビア。
サウジアラビアが率いるアラブ有志連合とイスラム教シーア派武装勢力フーシ派は
8月2日、イエメンでの内戦の停戦期間を2カ月間延長することで合意しています。

フーシ派は停戦発効前、ドローンでサウジの石油施設を攻撃し
これが原油価格を急騰させることがたびたび起こっていました。

両者の停戦延長は6月に続き2度目でイエメンでの戦闘行為は下火になっていますが
サウジは原油価格高騰で財政状況が好転していることに加え
米バイデン大統領が原油の増産要請でサウジを訪問、
8月2日米国はサウジの求めに応じて地対空ミサイルの売却を承認しています。

イエメンとの停戦合意に消極的だったムハンマド皇太子が
イエメンへの軍事介入を再開することが危惧されると藤氏。

中東を巡る問題、そして原油価格の展望はアーカイブ配信で藤氏の解説をぜひ。

https://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/trendplus/trendplus-220816.mp3