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電車などに乗っていると、スマートフォンなどの携帯端末でゲームを楽しんでいる方、多いですよね~。モバイルコンテンツの著しい成長は、多くの方が「肌感覚」で実感されているところではないでしょうか?

 2月13日放送の「今日の1社」では、昨年6月に新規上場した注目企業、携帯向けのスポーツゲームを提供するモブキャスト(3664・東証マザーズ)の藪社長にお越しいただきました♪ なぜこの同社が各方面から注目を集めるのか、井上哲男の取材後記にもご注目ください!

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取材後記
モブキャスト(3664)(東証マザーズ)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長、CEO/COOの藪孝樹さま。

「ゲーム業界が注目するゲーム会社」

▼スポーツゲーム好調
 昨年後半にも書いたが、昨年よりIPO市場が活況を呈している。その中でも、情報通信の初値が公募価格を大きく上回るケースが目立っているが、同社は昨年IPO上場した46社中、堂々の第2位。第1位~第3位をゲーム関連が独占したことから、“ゲーム強し”の印象を与えたが、同社はその中でも、投資家だけでなく、“同業が注目する”1社である。

 日本のプロ野球を題材とした「モバプロ」(2010年12月~)、競馬ゲームである「モバダビ」(2011年10月~)、サッカーゲームである「モバサカ」(2012年7月~)、メジャーリーグの「メジャプロ」(2012年9月~)とスポーツに特化したゲームを次々と展開、2010年7月時点で50万人であった会員数は、2年半後の昨年12月時点で280万人にまで増加(5.6倍)した。そして、その会員数のうち、最も多いのが「モバプロ」である。

▼「モバプロ」の良心 
 私は、実は草野球チームを持っている。チームに入って丸30年以上、GMになってから20年以上が経つ。試合が終わってお酒を飲んでいると、当然のように野球の話ばかりが延々と続くが、この「モバプロ」もよく話題に上がる。さんざん色々な野球ゲームをしてきたメンバーが「モバプロ」にはまる理由は、リアリティーが追求されていることにつきる。
 選手カードは20枚までしか持てない。現在、過去を問わず、実在した選手のみで構成され、「オズマ」のようなキャラクターが出てこない。選手の合成も出来ないので、イチローと松井を掛け合わせたような選手が出てくることもない。選手の獲得は代理人を通じて行われ、レベルの高い選手を獲得するためには、代理人も「駆け出し代理人」ではなく「ベテラン代理人」か「凄腕代理人」を使わなくてはならないが、良心的なことに、ここには使用制限がかけられている。つまり、たくさん使ってもらった方が会社の収益には結びつくが、それをせず、ARPPU(平均支払い額)を抑えた状態で選手のレベルアップを図ることがゲーム参加者に求められているのである。一昨年、青少年を含めてゲーマーが多くの支出をする根源とされた「コンプ・ガチャ」は、ハナから採用していない。1ヶ月のARPPUはゲーム・ソフト1本の平均単価である4000円~6000円に抑えるという方針を徹底し、ユーザーにそれ以上の負担をかけないように配慮している。

▼独自の強み「自社プラットフォーム」と海外への布石
 しかし、“同業が注目する”理由は、自社でプラットフォームを持っていることである。テレビCMで「“モバゲーで検索”、“グリーで検索”」と言っているが、これがプラットフォーム。ゲーム・メーカーは売上げの約30%を使用料としてこれらのプラットフォーム会社に支払わなくてはならないが、同社の場合はそれが無い。そして、無いばかりでなく、昨年10月にこのプラットフォームを他社に開放(オープン化)することを発表し、既にいくつかのゲームが配信されている。これについては、当然30%程度の収益が入る仕組み。自社ゲームのユーザー課金は抑えた状態でも安定的な収益源をモブキャストは持っていることになる。このゲーム配信は今年中に20タイトル程度まで増加すると同社は見ている。

 まだまだカタリストはある。2/1に韓国とインドネシアに開発拠点のあるエンタークルーズ社を株式交換で子会社化した。スポーツゲームはルールが世界共通であり、選手データの入れ替えなどの言語対応で済むことから、国を超えた汎用性が高いのだ。この収益の寄与については今期の見込みに入れていない。

▼キラリと光る本決算
 さて、そのモブキャストが上場して初めての本決算(平成24年12月期)を2/5に発表したが、利益の伸びもさることながら、利益率の高さが目を引いた。今期の見込みとして立てた数字によると、売上高経常利益率は24.29%、売上高最終利益率は14.29%となる。これは現時点での今期見込みベースで上場3548社中、経常利益率76位、最終利益率93位というものである。情報通信だからと思われる方もいらっしゃるかと思うが、その情報通信340社中でもそれぞれ、20位、23位と上位10%以内に入っているのだ。
 しかし、私が今回の決算短信を見て、最も驚いたのがその緻密さである。特に、「事業に関するリスク」について7ページもの枚数を費やすことによって詳細に述べている。久しぶりに短信を見て唸ってしまった。この内容は、同社のリスクを書いたというよりも、モバイル事業、ゲーム事業全般について想定しうるリスクをきちんと解説したものである。今ならTDNETで閲覧することが出来るし、本記事末尾からもリンクしておく。この業種に興味をお持ちの投資家は是非ご覧頂きたい。そして思った。やはり2012年組の情報通信は凄いと。(了)
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 取材後記は、以上です。
 なるほど、モブキャストが高く評価される理由がよくわかりました。エンタークルーズ社を活用した今後の海外展開についても、大変気になるところですね~。

 家庭用ゲーム機は、テレビに繋いで遊ぶ「据置機」と、携帯して遊ぶ「携帯機」に大きく二分されています。従来はファミリーコンピュータなどに代表される「据置機」が中心でしたが、そこからゲームボーイ、ニンテンドーDS、プレイステーション・ポータブルなどのゲーム専用の「携帯機」の市場が生まれ、さらにはスマートフォンなどのゲーム専用ではない端末に広がってきているところです。

 今後「据置機」で注目される「プレイステーション4」も登場してきますが、引き続きスマートフォンなどの携帯ゲームが存在感を増してくるのではないでしょうか?

 また次回の「今日の1社」もお楽しみに!

(関連リンク集)
■「モバプロ」ウェブサイト
■モブキャスト IR情報
■モブキャスト 2月5日適時開示 平成24年12月期 決算短信
■モブキャスト 平成24年12月期 決算説明補足資料


代表取締役社長CEO/COO 藪考樹様(前方右)、執行役員経営企画室室長 原田一進様(後方左)、経営企画室 渡辺雄介様(後方右)と。取材後記にある短信の情報や説明会資料は、原田様が主幹で作成されているとのことでした。