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「投資にあたっては投資対象への正確な理解が必要」・・・というのは当たり前すぎる話ですが、「バイオベンチャー投資」にあたっては、あらためてこの言葉を虚心に受け止めてみる必要があると思います。「今日の1社」担当の私自身きちんと理解できているかどうか自信がないのですが、それだけに今回の放送は注目しておりました♪

 1月16日放送「今日の1社」では、バイオベンチャーであり、外国企業でもあるメディシノバ(4875・JASDAQ外国部)です! 同社副社長・東京事務所代表の岡島様に出演いただきました。
 バイオベンチャーへの理解が一層深まる井上哲男の取材後記を、是非お読みください~。

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取材後記
メディシノバ(4875)(JASDAQ外国部)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は東京事務所代表の岡島正恒さま。

「バイオベンチャー投資」を考える

▼なぜ、欧米か
 1980年代の米国、そして、その後の日本で「バイオベンチャー」は上場のテーマとして大きく取り上げられてきた。米国では今でも同テーマの上場が続いているが、日本では特に2006年1月のライブドア・ショック以来、新規企業の上場を取り巻く環境が厳しくなったこともあり、数的には減少したが、それでも上場の際の人気は高く、また、上場後の業績も堅調に推移している企業が目立つ。

 メディシノバのJASDAQ上場は2005年2月。現在、唯一JASDAQ外国部に上場する企業(2006年12月よりNASDAQに平行上場)であり、バイオベンチャーの中で、「創薬ベンチャー」のカテゴリーに属する。
 日本の中堅医薬品メーカーの優れた医薬品候補化合物を選定し、欧米で医薬品として承認され使用されることが企業活動の目標であり、現在の主力化合物は気管支喘息急性発作を適応とするMN-221(ベドラドリン硫酸塩)(キッセイ薬品工業)、進行性多発性硬化症を適応とするMN-166(イブジラスト)(キョーリン製薬)の2つである。
 なぜ欧米で承認を得ようとするのか。それは、地域別での医薬品の売上構成の46%が米国、31%が欧州と、2地域で7割以上が占められているからである。(メディシノバ資料より。出典:IMSヘルス。2007年数値。国別では日本はおよそ9%で米国に次ぎ2位)米国の医療費用の高さはよく知られるところであるが、当然、医薬品単価も日本に比べて高い。

 その為、最大手グループは海外医薬品会社と提携して海外事業を進めているが、中堅の場合、単独での進出は厳しく、優れた化合物を世に送り出す同社のような存在が必要なのである。しかし、これが、「民」だけの力に果たして頼るべきなのであろうかという、一元的な疑問が個人的に沸く。「官」の力添えはもっと行われてよいのではないか、と。
 もっとも、実情は、海外での承認うんぬんの前に、国内でベンチャーとして創薬を行う環境は海外に比べて25年~30年遅れているという。一例を挙げると、1999年~2000年に規制が緩和されるまで、大学の先生が企業の役員となることも禁じられていたという。それまでは、医師であり大学の先生である者は創薬ベンチャーの社長になれなかったのだ。

▼お勧めしたい2冊の本
 岡島東京事務所代表が放送の中で自ら言われていたように、創薬ベンチャーへの投資は、ハイリスク・ハイリターンの投資である。バイオベンチャーについて投資家に聞かれると、私は一冊の本を読んでから考えることを勧めている。
 その本は「サイエンス・ビジネスの挑戦~バイオ産業の失敗の本質を検証する」(日経BP社)という。著者はハーバード・ビジネススクールのゲイリー・P・ピサノ教授である。しかし、この本は少し“ズルい”印象を受ける。バイオベンチャーが一世を風靡してから20年以上経てから、それまでの30年間のバランスシートとビジネスモデルの検証を用いて、「なぜ宝くじが当らなかったのか」を解説しているのだ。それでも、宝くじを買う人はいるし、実際に、アムジェンやジェネンテックは大成功している。要は、この本を読んでどのような印象を持つかで、バイオベンチャーに投資を行う資質があるのかないのかを自ら判断できると私は考えるのだ。前提条件は「社会に必要なものを作っている企業を応援したいか」「結果を数年というバイオベンチャーにとっては短い期間で求めないか」である。

 もう一冊勧めるとしたら、この12月に上梓されたばかりの「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」(ダイヤモンド社)。東大発のバイオベンチャー「ユーグレナ」(ミドリムシの学名)の創業者、出雲充氏の快作だ。
 その、ユーグレナ(2931)、公募価格の1700円の2.3倍の3900円で寄り付いたのが、上場2日目の昨年12/21。昨日(1/16)の終値は13000円、PER:135.9倍、PBR:29.5倍となっている。短期筋の値幅取りの動きが目立ち、前掲の前提条件とはかけ離れた値動きとなっているのが気掛かりだ。。。

▼「官」にできること、投資家に望むこと
 医薬品の開発・研究として有名なのはアイルランド。世界中の医薬品メーカーが集まる同国は、法人税の低さと製薬ベンチャー起業のし易さで知られ、医薬品は同国で主力産業となった。日本のメーカーも数多く進出している。再度言う。海外での承認うんぬんの前に、国内での創薬、創薬ベンチャーに対して「官」が出来ることはいくらでもある。加えて苦言を呈するならば、投資家も「バイオベンチャー投資」を一度冷静に考えることである。株価が急落して次回のファイナンスに支障をきたした場合、結局はその応援している企業のためにならないということを。(了)
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取材後記は、以上です。いかがでしたか?実際の放送とあわせてお読みいただくと、より整理がつくと思います。

メディシノバは、同社ウェブサイトの「IRスケジュール」を参照すると、個人投資家向けIRイベントに数多く参加していることがわかります。創薬はたいへん専門性の高い事業ですから、正確な理解をしてもらうためには、分かりやすい説明を継続的に行っていくことが必要なのでしょうね。

メディシノバの事業と今後の展開については、同社のウェブサイト(日本語)にも記載がありますので、どうぞご参照ください!

(関連リンク集)
■メディシノバ ウェブサイト
■メディシノバ IRイベント


東京事務所代表 岡島様と。