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新潟県といえば米どころとして有名ですね。新潟県では、そのお米を原料にした「米菓」の製造もたいへん盛んで、同県に本社を置くメーカーが国内シェアの上位を占めているんです♪
 2012年最後の「今日の1社」を飾るのは、その米菓シェア国内トップ、亀田製菓(2220)の田中社長です! 井上哲男の取材後記をどうぞお読みください~。

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取材後記
亀田製菓(2220)(東証一部)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の田中通泰さま。

「米どころ新潟」

▼「お菓子総選挙」圧勝
テレビ朝日の人気番組「お願い!ランキング」で今秋行われた「1万人が選ぶお菓子総選挙」(スナック・米菓部門、740品目)において、同社の「柿の種」が他を寄せつけずにダントツで1位となった。「ハッピーターン」も8位と、「かっぱえびせん」の9位を上回り、“亀田製菓強し”を印象づけたが、社長にこのことを言うと、「いや、私は『じゃがりこ』が絶対1位だと思っていたんですよ。3位くらいに『柿の種』が入ってくれればいいなと願っていましたけど」との答え。・・・意外である。

▼「グローバル・フード・カンパニー」を見据えた国内外戦略
 誰もが知っている米菓会社であるが、同社が目指しているものは「グローバル・フード・カンパニー」。この標語は明解にその方向性を示している。3本の柱は「国内米菓事業(のさらなる攻勢)」、「ヘルスケア」、「海外(展開)」である。

 「国内米菓事業」はさらに拡大する余地があるという。コンビニのPB、ドラッグ・ストア向け廉価商品、シニア・単身向けの少量商品の投入などだ。「ハッピー・ターン」はこの10月からの1年間でこれまでの年間売上高であった80億円を100億円に伸ばす目標を立てて注力している。この10月に阪急百貨店・阪急うめだ本店に「HAPPY Turn`s」という専門店をオープンさせて、現在も長蛇の列で購入に時間がかかるという。抹茶味などの、ここでしか手に入らない商品が人気である。

 「海外事業」は中国とタイに1社、米国に2社、拠点となる会社を設立している。米国2社のうち1社は「TH FOODS、INC」は小麦アレルギーの人向けにグルテン・フリーのクラッカーを作っている。

▼次なる一手に注目、「ヘルスケア」事業
 私がもっとも注目しているのは「ヘルスケア」事業。この中には、腎臓病患者向けの治療食(ご飯)「ゆめごはん」や「ふっくらおかゆ」、さらに米由来の乳酸菌「カゼイカメダ」を使った「植物性乳酸菌ヨーグルト」などが含まれる。「米飯事業」と呼ばずに「ヘルスケア」としているところに同社の方向性が強く感じられる。まだ基本合意ではあるが、乾燥米(アルファ米)分野でのシェアを50%以上占める尾西食品を買収することをこの度発表した。この買収が、「ヘルスケア」部門の収益に寄与するときが次のカタリストであると予測する。人口の高齢化に対応したビジネスである。

▼安定した業績
 業績については、この10月に小幅の下方修正を発表したが、それでも前期比で1.5%の増収、最終利益は9.8%の増益であることが評価されて、株価は一時的に下落した後に発表前の水準まで戻ってきた。
何よりも、この会社の一番の強みは業績にブレがなく、非常に安定しているところである。売上はこの8年間700億円台で推移し、経常利益も35億円~40億円、最終利益も20億円~22億円程度で推移している。2期前にも「この上期の業績では通期も厳しいかも」と思ったことがあったが、結局見込み通りの数字を出してきた。結果、ROEは7%台の後半、配当性向も22%~25%という数字をキープし続けている。これほどブレのない会社も珍しいといえる。

▼「米どころ」を築いた先人の努力
 新潟銘柄は銀行を除いて30弱あるが、地元色の強い、特徴のある企業が多い。
 亀田製菓も“米どころ新潟”を体現する会社だ。しかし、新潟はもともと米作りに適していたわけではない。稲は水中でも発芽する珍しい植物だが、それでも限度はある。あまり深いと空気が足りなくて発芽しない。水はけが悪い土が米作りには適しているが、悪すぎるのは論外。胸まで浸かって田植えをしていた新潟平野が米どころになったのは、暗渠排水という大工事を行ったからである。その新潟と収穫量を競っている北海道も、もともと米は上川盆地あたりでしか収穫できなかった。石狩平野の土を全部入れ替える客土というとてつもない作業を行ったからこそ現在の姿がある。先人の努力にはただ、ただ頭が下がる。

 御茶ノ水に東京堂書店という私の好きな本屋がある。その2階に、地方で出版された、その地方の文化史や農業史を紹介する本ばかりを揃えたコーナーがあり、行くと時間が経つのを忘れてしまう。今度の正月は新潟の酒を飲みながら、買ってきたもののまだ読んでいない本を読もうと思う。(了)
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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 巷では「日本はどこに行っても同じ」というような意見を耳にすることがありますが、私は違うと思っています。それぞれの地域に固有の歴史や風土、そこから発展した産業がありますし、「県民性」といわれるものも(あまりステレオタイプな決め付けはイケナイですが)確かにあると感じています。

 恥ずかしながら、私は新潟県は最初から米作りに適した土地だったとばかり思っていました~。しかし「米どころ・新潟」作り上げた先人の努力を知ってみるとその土地に根付いた産業の強靭さは、非常に腑に落ちるものがあります。

 さてさて、これで「アサザイ 今日の1社」は今年はおしまいです。
 来年は1月9日(水)スタートですので、お楽しみにっ!!

<関連リンク集> 
■亀田製菓 IR情報
■11月19日付 2013年3月期 第2四半期 決算説明会資料


代表取締役社長 田中様と、同社の多彩な商品。