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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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5月18日「アサザイ 今日の1社」は、ヘリオス(4593、マザーズ)を放送しました。

 今回は代表取締役社長兼CEO 鍵本忠尚様にお越し頂きまして、創業の経緯、3つの開発パイプラインなどについて詳しくお話しを伺いました。

 患者さんに、「私の目の病気は治りますか?5年前に生まれた孫の顔を一目見たいのです。」という切実な願いを聞き、「必ずや有効な治療法を開発して多くの患者さんに届ける」と心に誓い起業したという同社。
 「『生きる』を増やす、爆発的に。」というスローガンのもと、生きる喜びを広げてゆきたいという強い思いを胸に、現在も技術開発を続けています。

 今回、鍵本社長の強い思いが伝わってくる取材後記が、インタビュアーの井上哲男より届いています。ぜひご覧ください。
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取材後記
ヘリオス (4593) (東証マザーズ)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役 兼 CEO 鍵本 忠尚( かぎもと ただひさ )様。

「『生きる』を増やす。爆発的に。」

▼ヘリオス起業の経緯
 フレッシュな顔ぶれの紹介が続くが、今週は昨年6月に上場したヘリオスである。マーケットでiPS細胞を用いた再生医薬品がテーマとなると必ず名前が挙がる同社であるが、起業の経緯は眼科医である鍵本社長がある患者さんに出会ったことに遡る。

 加齢黄斑変性という病気がある。
 "眼のアルツハイマー病"とも呼ばれ、症状の進行で失明することもある。この加齢黄斑変性の患者から、「孫の顔を見たことがないのですが、治りませんか?」と言われ、治療法の確立していない疾患であるため、答えられなかった自分に対する忸怩(じくじ)たる思い、そして、理化学研究所の高橋政代氏らとともに、この治療法はあると考えたことから起業に踏み切ったのである。

▼ヘリオスの強みである「BBG」
 同社の強みは既に上市している医薬品があるということと、もうひとつ今年後半にも臨床試験入りとなり、そして、条件付き早期承認制度の認可が期待される医薬品があるということである。特に後者がロードマップにおいて現実味を帯びれば、目指している残り2つの開発が大きく前進するのである。

 順に説明しよう。
 まずは、既に上市されている医薬品であるが、これは「BBG」というもので、社長自身の出身大学である九州大学の研究グループが発見した染色性の高い色素を基に開発した化合物医薬品である。透明な眼の組織の手術において、この色素が色をつけることにより、施術がし易くなり、成功の確度も上がる。
 眼科手術補助剤であるこの「BBG」は、海外ではオランダのDORC社、国内ではわかもと製薬にライセンス供与を既に行っている。

▼3つの開発パイプライン
 次に3つの開発パイプラインであるが、まずは、前述の今年後半に臨床試験入りする可能性の高い医薬品から。

 これは、米国アサーシス社のマルチステムを使った脳梗塞治療薬で、範疇としては体性幹細胞再生医薬品のカテゴリーに入る。
 現在、日本の急性脳梗塞患者数は年間で22~23万人と言われているが、発症後4.5時間以内の投薬が後遺症等を含めた"境界線"なのだという。実際にこの時間内に病因に到着する患者の割合は、約10%程度だという。

 しかし、この脳梗塞治療薬は発症後36時間(4.5時間の実に8倍)以内に点滴で1度投薬すれば、効果があるという。
 米国での臨床も第二相臨床試験まで進んでおり、この時間内での有効性、そして、要介護の後遺症率にも差が出ているという。

 現在、日本でも政府の強い後押しの下、従来10年程度は要した臨床試験が、早期の段階で限定承認が行われる道筋がついている。非常に期待値が高い。

 この米国アサーシス社のマルチステムを使った脳梗塞治療薬が認可を受ければ現在進めている残りの開発を強力に進めることができる。

 1つは起業のきっかけとなった加齢黄斑変性治療薬である。

 これは、iPS細胞を分化誘導することで作製したRPE細胞を医薬品として提供し、新しい治療法の実用化に結びつけたいというものである。専門用語になるが、このRPE細胞は「iPS細胞由来網膜色素上皮細胞」というものらしい。

 前掲した理化学研究所の髙橋政代氏らが中心となって考案したRPE細胞への分化誘導方法とヘリオスの独自のノウハウによって、効率的な培養方法の確立に成功した。神戸研究所では、眼科医1名・PH.D.3名を含む20名強の研究員が、これらの細胞を製剤化して加齢黄斑変性の罹患者の方々に施術・投与するための治療法と安全かつ効率的な生産方法の確立にむけて研究開発を進めているという。

 また2014年より、産学連携によるiPS細胞関連技術の研究開発をさらに推進するため、大阪大学にて、細胞製造システム工学(ヘリオス)共同研究講座を開設し、共同で研究を進めている。

 2つめは、このiPS細胞を用いた3次元臓器の作製である。

 2013年に横浜市立大学がiPS細胞から血管構造を持つ機能的なヒト臓器の創出に成功して大きな話題となったが、このiPS細胞から臓器原基が作られ、その細胞を移植することによって、腎臓、肝臓、膵臓などの臓器を作製するというメカニズムの研究・開発を行っている。このヒト臓器原基作成に関する独占的な特許実施権許諾契約を横浜市立大学と締結している。

▼スローガンから伝る社長の決意
 同社の企業スローガンは、「『生きる』を増やす。爆発的に。」である。

 鍵本社長はまだ39歳。とてもハンサムなうえ、実直なお人柄がすぐに誰にも分かる人である。決して、"風呂敷を広げ"たりするタイプではない。その人が、この熱く、短いスローガンを掲げていることに、その決心の強さ、深さが窺えるのだと強く思った。

 アベノミクス相場の効用として挙げられるのが、IPO市場の活況である。そして、近年上場した企業には、本当に応援したい企業が多いことを感じる。無論、ヘリオスもその1社だ。
 何度か書いたが、「アサザイ」の使命は変わらない。このような企業を徹底的に調べて世に知らしめることだ。数行の紹介でなく、徹底的に。爆発的に。

 今回、プロネクサスから送られてきた事前の企業調査シートであるヒアリングメモ、そして資料は膨大な量であった。担当者の時間的負担も大きかったであろう。だから、こちらもとことん調べるのだ。ヘリオスはまさしく、それに資する会社であった。

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 取材後記は以上です。いかがでしたか。

 今回は同社の経営方針をロングインタビューでオンデマンド配信します。
 業績を伸ばす為の二輪となる幹細胞とiPS細胞など、具体的な施策について詳しくお話しを伺いました、ぜひこちらもチェックして下さい。

 それでは、来週もお楽しみに!

(関連ウェブ)
ヘリオス IRサイト

代表取締役社長兼CEO 鍵本忠尚さまと