日本製鉄(5401)は2日、今3月期の連結営業利益を8月の予想値6000億円に対して8000億円に上方修正しました。2000億円の増額修正です。以下に示します。
日本製鉄(5401)の営業利益
2022年3月期 8000億円(8月予想比+2000億円)
8月予想値に対する営業利益変動要因
在庫評価差等の一過性要因 +650億円
生産出荷 -150億円
マージン +900億円
その他 +100億円
国内グループ会社 +150億円
海外グループ会社 +300億円
在庫評価等の一過性要因を除くと、増額修正の幅は1350億円です。マージンは、販売価格と原材料価格の差です。販売価格の上昇によって、マージンの一段の改善を実現し、上方修正となりました。「生産出荷」については、8月時点よりも悪化しています。自動車業界の減産の影響がここに表れています。
日本製鉄では、今年度の製造業向けの鋼材需要の見通しを公表しています。以下に示します。
製造業向け鋼材需要
今年度上期 1680万トン(8月予想1750万トン)
今年度下期 1900万トン(8月予想1890万トン)
そのうち自動車業界向け鋼材需要
今年度上期 740万トン(8月予想820万トン)
今年度下期 910万トン(8月予想910万トン)
上半期の鋼材出荷量が8月時点の予想に対して70万トン減少しています。自動車業界向けが80万トン減少していますので、これが鋼材全体の出荷量減少をそのまま示しています。
自動車業界向けの下期の生産量は910万トンで、8月時点の予想と変わりません。8月時点と比べて下期は落ちないことになりますが、上期の減産分を挽回するには至らない計画となっています。
日本製鉄では、原材料の市況動向も開示しています。このデータによると、鉄鉱石の価格が7月以降に急落する一方で、原料炭価格は6月以降、急騰しています。原料炭価格の急騰により、原料炭の利益面におけるウエートの高い総合商社などの利益は増えることが予想されます。
一方で、先週に決算を発表した特殊鋼の大手メーカー、大同特殊鋼は営業利益の見通しを下方修正しています。日本製鉄と比較してみると、鉄鋼業界の特徴がより深くわかるように思います。
大同特殊鋼(5471)の営業利益
今年度営業利益 310億円(期初予想350億円に対して下方修正)
今年度の営業利益変動要因(カッコ内は期初の4月計画値)
原燃料市況 -511億円(-264億円)
数量変化 +263億円(+253億円)
価格変化 +356億円(+162億円)
内容差等 +101億円(+91億円)
固定費 -57億円(-51億円)
大同特殊鋼は10月28日、今3月期の営業利益を従来の350億円に対して310億円に下方修正しました。原燃料の価格が4月の想定時と比べて大幅に上昇したことで、営業利益の減益要因が増えました。それに対して、販売価格も引き上げましたが、原材料価格の上昇には追い付かず、営業利益が下方修正を強いられたことがわかります。期初計画に比べて、原燃料費が247億円増える一方で、販売価格の上昇分は194億円にとどまり、その差が下方修正要因となります。