「1日の米国株は小動き」
「ADP発表の雇用者増加数は低水準」
「8月のISM製造業景況指数、前月比で上昇」
「在庫指数上昇、入荷遅延指数が低下」
昨日1日の米国株は小動きとなりました。ニューヨークダウは0.14%の下落率となる一方で、ナスダック総合指数は0.33%上昇しました。ニューヨークダウ採用銘柄における上昇率上位5社は、ディズニー、セールスフォース、P&G、コカ・コーラ、アップルです。一方で下落率上位5社はキャタピラー、シェブロン、アムジェン、アメリカンエクスプレス、ハネウエルでした。IT株やディフェンシブストックが高く、景気敏感株や資源株は比較的安くなる状況でした。
民間調査機関のADPが発表した8月の雇用調査によると、非農業部門の雇用者数は、37万4000人の増加となりました。業態別では「モノつくり」で45000人、「サービス業者」で32万9000人の増加でした。「サービス業者」のうち、「レジャー・観光」が20万1000人を占めました。
ADP発表の雇用者は伸び悩んでいます。労働省発表の非農業雇用者増加数と並べて時系列推移を見てみましょう。(単位1000人)
ADP 労働省
5月 882 614
6月 741 938
7月 326 943
8月 374 (9月3日発表)
ADPと労働省発表のデータの乖離が大きくなっています。従って、1日に発表されたADPの内容を受けても、雇用伸び悩みの認識はさほど広がらなかったように見えます。
1日には、8月のISM製造業景況指数も発表されました。59.9と前月比で0.4%Pの上昇となりました。ニューヨーク連銀発表(8月16日)の8月製造業景況指数が大きく低下していたので、ISMの指数も低下することが考えられましたが、非常に強い数字となりました。項目別指数を以下に示します。
新規受注 66.7(+1.8)
出荷 60.0(+1.6)
雇用 49.0(-3.9)
入荷遅延 69.5(-3.0)
在庫 54.2(+5.3)
顧客在庫 30.2(+5.2)
価格 79.4(-6.3)
新規受注や出荷が増える一方で、雇用指数が低下しています。ADPの雇用調査と合わせ、ISMの雇用指数も低下して、かつ50を2か月ぶりに割ってきました。1日発表の米国経済指標は、週末発表の雇用統計に対しての投資家の視線をやや低めにした可能性があります。
そのほか、ISM項目別指数では、在庫指数が低下して、入荷遅延指数が上昇したことが注目点です。出荷が進み、足りなかった在庫が補充されて、かつ、顧客にモノが届く時間が短縮されたことがうかがわれます。サプライチェーンの混乱がやや落ち着いていることを示すデータと捉えられます。
ただ、購買担当者から紹介されているコメントは、材料不足、従業員不足、サプライチェーン問題を指摘する声で溢れている状況には変化はありません。以下に要約の一部を記載します。
「半導体不足が供給網に影響を与えている。」 [コンピュータおよび電子製品]
「COVID-19のケースで一部の工場が影響を受けている。マレーシア政府は、工場は60%の能力でしか操業できないとしている」 [コンピュータ・電子機器製品].
「港湾業務の遅延や海上コンテナの逼迫により、リードタイムの延長が続いている。製造能力は、労働者の不足による生産量の減少の影響を受けています」[化学製品].
「半導体の供給問題により生産が制限されている」 [輸送用機器]
「サプライチェーンは厳しい。陸路と海路の両方で、COVID-19による従業員の欠勤で、すでに逼迫した労働力がさらに悪化している」 [食品・飲料・たばこ製品]
「ビジネスは好調だが、原材料価格は価格圧力が高まっている」 [プラスチック・ゴム製品]
「顧客からの受注残が増え続けている。価格上昇が続き、物流は継続的課題」 [機械]
供給面の改善がなかなか進まないとの意見も多いようです。