「FOMC結果発表、米国株の反応は限定的」
「出遅れ株への物色意識、ラッセル2000は1.5%上昇」
「TDKの電池事業、原料コバルト上昇の影響受ける」
「日産が上方修正、自動車株全般への波及はあるか?」
28日の米国株は、ニューヨークダウが0.36%の下落率となる一方で、ナスダック総合指数は0.7%の上昇率となりました。動きの良かったのは小型株です。小型株全般の値動きを示す「ラッセル2000」は1.5%の上昇率となりました。
足元で、ニューヨークダウ、ナスダック総合指数、S&P500種指数が史上最高値を塗り替える一方で、「ラッセル2000」は、3月15日の2360Pの高値に対して、およそ7%も下の位置にありました。主要指数と比べて出遅れた「ラッセル2000」の上昇率が高くなったことを考慮すると、出遅れ株の買い付けを意識した動きが出ているのかもしれません。
米国時間28日には、FOMCの結果が発表されて、パウエル議長の記者会見が行われました。結果としては、新鮮な材料は提供されず、マーケットも大きな反応は示しませんでした。
今回の声明文の中で、新しい部分としては、次の文があります。
「Since then, the economy has made progress toward these goals, and the Committee will continue to assess progress in coming meetings.」
「経済はゴールに向かって進展してきた。FOMCは来るべき会合たち(複数の会合)において、進展を評価するだろう。」
「複数の会合」とあります。複数は2回以上です。次の会合は9月21日―22日です。その次は11月2日-3日です。少なくとも11月の会合までは、金融緩和の量的規模に対してテーパリングの決断は下されないというメッセージです。もちろん、進展を評価するので、評価の状況によっては、テーパリングは行われません。市場の考え方に沿ったメッセージなのでしょう。
さて、日本株です。昨日は、日本でも主力企業が決算発表を行っています。電子部品メーカーでは、TDKが4-6月期決算を発表しました。4-6月期の営業利益は、前年同期との比較で67%増益の308億円となりました。
67%増益というと、良好な決算に見えますが、会社側では「第1四半期における利益の進捗率は、期初計画と比べると下振れた」と話していました。つまり、あまり良くない決算結果です。半導体不足やASEANにおけるロックダウンにより、中国のスマホ生産が予想に届かなかったことが影響しています。ただ、この4-6月期の生産未達状況については、年後半に向けて、リカバリーができると見ています。通期業績見通しは修正していません。
TDKの事業の中で、近年、稼ぎ頭となっている事業は「エナジー応用製品」です。この分野の中心製品は、二次電池です。
この「エナジー応用製品」の4-6月期の売上高は1996億円(前年同期比+27%)と大きく伸びました。スマホ、タブレットPC、ノートPC向けの電池の出荷拡大は続いています。
しかし、同事業の営業利益は、前年同期比25%減少の234億円となりました。売上高が27%も増加えしているのに、営業利益は25%も減少している――かなり驚く結果です。
これは、電池の原材料価格が高騰しているためです。特にコバルトの価格が上昇して、原材料価格を押し上げ、利益の伸びを抑制しています。今後、原料の値上がり分を販売価格に反映させる努力をします。しかし、4-6月期については、大きく売上高は伸びているのに、減益を強いられる状況をもたらしました。
電池のメーカーは家電や通信機器、自動車メーカーを販売先にします。家電や通信機器、自動車メーカーは消費者を販売先にします。4-6月期については、より川上に位置する企業の方が利益動向は相対的に良くなると考えられます。
電池の場合は、川上から川下にかけて、
素材・化学メーカー(住友金属鉱山、旭化成、東レ等)→電池メーカー→家電・自動車メーカー、という取引の流れになります。
リチウムイオン電池の正極材と使用されるコバルト酸リチウムについては、コバルトの価格が急騰しているので、ニッケルなどの他素材を使用するケースが増えています。採用が増える素材を供給している企業などの収益が良くなってくるでしょう。
三菱自動車に続き、28日に4-6月期決算を発表した日産自動車も今3月期の営業利益を上方修正しました。営業利益は従来のゼロから1500億円に修正されました。既に、昨日、日産の株価は上昇していました。上方修正がここまでの株価に織り込まれてきたのかどうか、本日の株価動向が注目されます。三菱自動車や日産の上方修正が、他の自動車関連株全般にどの程度波及するのか、注目されます。