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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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企業のグローバル化が進む中、近年は銘柄を見るときに海外売上高に目が行くようになってきました。3月13日放送の「アサザイ 今日の1社」に登場いただいたのは、海外売上高比率が毎年4割を超え、オペアンプ(演算増幅器)生産量で世界トップクラスを誇る新日本無線(6911・東証一部)です!

 今回は代表取締役社長の小倉良様にお越しいただき、井上哲男がインタビューいたしました。
 グローバル企業と切り離せないのが「為替相場」。今回の取材後記は、為替の観点からも井上哲男が分析をしています。是非、オンデマンド放送とあわせてお楽しみください♪

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取材後記
新日本無線(6911)(東証1部)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の小倉良さま。

「笑顔」

▼実効為替から見た円相場
 株式市場の上昇とともにドル/円相場も上昇し、私も為替のコメントを求められることが多くなった。その際に聞かれることは決まって「適正レートはどのくらいですか?」である。しかし、株価に適正株価が無いように、為替にも適正なレートというものは無い。輸入企業と輸出企業では、当然思惑は違う。それぞれの期待レートはあっても適正レートは無い。しかし、株価にもバリュエーションを計るためにPER、PBRなどの指標があるように、為替にもその澪つくし(みおつくし)となるものがある。それが、(実質)実効為替と購買力平価だ。

 少し、難しい話で恐縮だが、現在の円安論者の拠りどころとなっているのが、前者の実効為替である。ここに来ての貿易赤字の拡大を背景にますます、“最弱通貨である円”を主張する向きもいる。これを援護する訳ではないが、実際にサブプライム・ローンが問題化する直前を起点とした実効為替を計測してみると、円だけが10%程度のプレミアム状態で、ドルやユーロは逆に10%程度のディスカウント、韓国ウォンについては30%ものディスカウントがついていることが分かる。
日本は2010年の秋に為替介入を久しぶりに行い、震災時の協調介入以外でもそれ以降2回介入を行ったが、恒常的に介入を行う形で自国通貨安に誘導されたウォンの前に、結局日本企業は40%近く為替面での価格競争力を失ってしまったのである。韓国は2011年統計でGDPの世界順位は15位。決して大きくはないGDPゆえ、輸出と自国通貨のコントロールに政府、中央銀行が躍起になった結果である。

▼為替と業績
 それまで14期連続で黒字の好調な決算が続いていた新日本無線が赤字となったのが、2009年3月期のこと。サブプライム・ローン問題の象徴的な出来事であるリーマン・ショックの期である。世界景気の減速と円高による価格競争力の低下のダブルパンチは半導体メーカーを直撃した。そして、前期まで4期、厳しい状態が続いたのである。社長はインタビューの中で、為替1円の円安で1.5億円の増益効果と話された。前提レートは1ドル=80円。通期ベース95円で22.5億円の利益となる計算である。14期連続で黒字決算であった際の平均最終利益は14億円強。如何に為替の効果が大きいかがお分かり頂けると思う。

▼事業構造改革と成長戦略
 無論、為替が円安になることを願って何もしなかった訳では決してない。2011年8月から、「低成長でも利益を創出できる強固な経営基盤の構築」を目指し、痛みを伴う事業構造改革を行ってきた。それが、この12月期の第3Qの決算に効果としてはっきりと表れている。
 また、「FORWARD20」というキャッチフレーズで新事業の開拓を進めている。これは、1つの事業で年商1億円以上となるものを20件以上推し進めていこうというものである。社長いわく、「昨年は2~3件くらいしか思いつくものが無かったが、今期はざっと見ても20件以上がリストアップされた」ということであり期待したい。

“走る電子部品”であるゆえ、チェックの厳しいことで知られる自動車メーカーから3年連続で「品質優秀賞」を贈られた同社。その技術、品質の高さは折り紙つきである。そのようなメーカーまでが苦労したのが、今までの円高であったのだ。是非、来期また「アサザイ」にお越し頂きたい。そして、社長の笑顔が見たい。その時は、きっと、日本が笑っている。(了)
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 取材後記は、以上です。
 円高がいかに輸出企業の業績に影響をあたえたか、あらためてわかりますね。企業側の立場からはなかなか言及しにくいところですから、参考になります。

 また放送中にもあったように、新日本無線が現在進めている事業構造改革の進捗も見逃せないところです。詳細につきましては、同社の決算説明会資料をご参照くださいね♪

 高い技術で世界を支える日本企業には、是非頑張っていただきたいと思い次第です!
 
(関連リンク集)
■新日本無線 株式・投資家情報
■新日本無線 決算説明会資料


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