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さて、またまた井上哲男の取材後記です。
 2月6日放送の「アサザイ 今日の1社」は、コメ兵(2780・東証二部/名証二部)代表取締役社長の石原司郎様にインタビューしました♪
 コメ兵は名古屋を基盤としつつ関東地区、関西地区などにも出店を強化していますので、馴染みのある方も多いのではないでしょうか?

 今回の取材後記では、井上哲男は特に「バリュー」の側面から小売業界と同社について分析をしています。以下、早速お読みくださいっ!

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取材後記
コメ兵(2780)(東証二部、名証二部)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の石原司郎さま。
「割安な『中古小売業』」


▼「小売」の林に分け入って
 小売業は個人投資家にも人気の高い業種であるが、以前からアナリストのレポート力には疑問を持っている。時価総額の大きい銘柄や百貨店、月次売上を発表している企業の数字を追うだけで、果たして、「業」全体の動向をきちんと反映しているかということに関して、私の評価は低い。
 個別銘柄は「木」、市場全体は「森」。よく、市場全体の動向を見ることが肝要だという戒めで、「木を見て森を見ず」という言葉が使われるが、私は、業種という「林」を見ることが、それに加えて大切だと思っている。そして、小売業という「林」はいくつもの違った「林」の集合体であり、細区分が必要である。

 具体的に私がどのように区分しているかというと、「小売」全体を、「総合小売」、「専門小売」、「無店舗小売」、「外食・食料小売」の4つの中分類に分け、小分類としては中分類の「総合小売」を「百貨店・スーパー」、「ホームセンター」、「100円ショップ」の3つに、中分類の「専門小売」は「衣料」、「電気機器」、「自動車・自動車部品」、「薬局・調剤薬局」、「中古品小売」、「その他の専門小売」の6つに区分している。そして、それぞれの林の元気度を見た上で、その中での個別銘柄の魅力度を測っているのである。

▼「元気な林」を見つける
 昨年9/5にご出演頂いたワッツ(2735)は、このスクリーニングで発掘したものである。放送日に丁度1000円前後であった株価は、この2/5に1575円まで駆け上がった。また、昨年、私はこの番組でも「ディフェンシブ・グロースの時代」という言葉をよく使った。これは、成長性のある内需株のことであるが、これも“元気な林”をピックアップしたものであり、具体的な業種として『情報通信・サービス・小売』を挙げ続けた。年末の特番もこのテーマに沿ってSMS(2175)、デジタルハーツ(3620)にご出演頂いたので株価の推移をご覧頂きたい。

 しかし、これらの銘柄の株価上昇の背景には、きちんと理由がある。それは、外国人も私と同様にスクリーニングを施したうえで銘柄選択を行っているということである。
 その証左を示そう。米国最大の株式投信会社フィディリティのファンドである、FMR LLCが今年に入り大量保有報告を行った銘柄が11銘柄あるが、そのうち7銘柄が「情報通信・サービス・小売」なのである。因みに小売は4銘柄、前述のワッツ(2735)に加えて、ドン・キホーテ(7532)、ハイデイ日高(7611)、ナフコ(2790)が入っている。決して大型銘柄ばかりを買っているわけではないことがお分かり頂けると思う。

▼割安な「中古品小売」
 前書きが長くなった。「小売」に話を戻そう。その小売の「林」のなかで、「中古品小売」のバリュエーションが非常に低い状態で放置されていることを感じている。番組の中でも紹介したが、市場規模は10年間で倍となり、2011年には1兆900億円にまで膨らんでいる。これを裏付けるように、10年前の2002年末に9社であった中古品小売の上場銘柄数は、現在14社にまで拡大している。

 その「中古品小売」であるが、小売全体の小区分の中で、実は「衣料」に次いで利益率が高い。しかし、「小売業全体」のPERと「中古品小売全体」のPERの年末推移を追ってみると、2007年時点で10倍程度「中古品小売」が「小売業」に対してプレミアムがついていたものが、リーマン・ショック後である1年後の2008年末には5倍程度のディスカウント状態となり、2009年末にはなんと25倍以上にまでディスカウント幅が拡大し、さすがに縮小したものの、ここ3年間も大体10倍程度のディスカウント状態で推移しているのである。
 PBRについては2008年末以降、「中古品小売」は「東証一部」に対して、ほぼ、イコールの状態で推移しているが、コメ兵については、1倍~0.3倍ディスカウントした状態で放置されている。そのため、2/5の時点でのバリュエーションはPER8.68倍、PBR0.63倍となっている。業界の大手がPBRで「中古品小売全体」よりもディスカウントされている状態は不思議である。

 これは、「中古品小売」における資産の健全性・流動性について市場が疑問を持っていることの裏返しなのかもしれない。しかし、これは誤認と私は判断している。「中古品小売」のバリュエーションが低く評価されるようになったのは、確かにリーマン・ショックを経てである。当時PBRが0.2倍程度の不動産やその他金融で倒産が相次いだが、それらの業種と「中古品小売」は違う。事実、1社も上場会社は倒産していない。資産の回転率を分析したが、結果は他の小売と同等の評価がPBRにおいてされるべきというものであった。まとめる。「中古品小売」は割安感が強い。中でもコメ兵は特にその印象が強い。(了)
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 井上哲男の取材後記は、以上です。なるほどですね~。

 小売業は個人投資家にとっても身近で、全般的に個人株主の割合が高い企業が多いです。
 私はこれまで、BtoB企業のIR担当者様とお話していると「なかなかわかってもらえなくて・・・」という話を聞くことが多く、それに比べて小売業は「わかりやすい」という印象を持っていました。
 ただ、実際にこうしてバリュエーションを解析してみると、まだまだきちんと企業価値が理解されていない部分もあるということなんですね~。

 「今日の1社」では、引き続きそんな企業の魅力をお伝えしていきたいと思いますっ!


(関連リンク集)
■コメ兵 IR情報


代表取締役社長の石原司郎様と。