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「高齢化社会」という言葉が日本で使われるようになってから、かなりの年月が経過しました。「高齢社会白書」が初めて政府から発行されたのが1996年ですから、少なくともその時から16年以上は経過していることになります。
 もはや「来るべき」高齢化社会ではなく、現在進行形の問題といえるでしょう。

 そのような環境下注目されるのはやはり、高齢化社会に対応する企業ですね。今回「今日の1社」に出演いただいたのは、介護サービスを中核とするケアサービス(2425・JASDAQグロース)の福原敏雄社長です!
 井上哲男の取材後記を是非お読みください♪

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取材後記
ケアサービス(2425)(JASDAQグロース)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の福原敏雄さま。

「介護の到達点」



▼“大人の街”で築いた信頼
 東京は“大人の街”である。
 東京都は人口に占める65歳以上の比率が9%で全国1位であるが、25歳以上の全ての世代で年代別人口比率が1位。つまり、現在も、そして、将来も、高齢化という社会ニーズがあり、それに対応していかなくてはならない場所なのである。それを行政も認識しており、2012年4月の介護保険法改正により、東京23区は全国で唯一の1級地に指定された。
 しかし、大手社にとっては厄介な問題もある。土地・施設代金が高いのにも係わらず、施設寿命30年という制限があり、新規で大規模な施設を作ると償却負担も大きいのだ。そのため、同社は施設寿命20年以下で改廃対応力のある通所介護事業所を開設し、在宅支援のためのデイサービスを強化し、「家族ありきの介護、在宅支援」を実践してきたことが信頼という企業価値となっている。

▼本当のニーズに応える
 同社の介護事業はデイサービス・訪問介護・訪問入浴など、介護を受ける人の生活空間に密接したところで行われている。このうち、訪問介護・訪問入浴などは利益率重視の大手社が参入を躊躇っているが、切迫したニーズのあることである。
 創業は昭和45年(1970年)。老舗中の老舗である。社長が独立して1台のトラックで寝たきり老人などの布団の消毒乾燥を行う寝具乾燥事業を行ったことが原点だ。そして、その経験の中で培った「介護を受ける側の本当のニーズに対応すること」が同社の事業の根幹に流れていることを感じる。

 その一例が、埼玉県に3棟経営しているサービス付き高齢者向け賃貸住宅(フォーライフ)である。これは「賃貸」である。つまり、老人ホームのように、契約時に高額の入居金を必要としないものである。
 現在、大手社を中心として老人ホームの新規造営ラッシュである。厚生労働省の発表によると、高齢者向けの施設は65歳以上の人口の4%分しか確保されていない。自治体などの運営による、所謂“特ホ”の待ちは40万人を超え、結果、民間、特に大手社が老人ホームの新規開設を急いでいるが、高額な入居金がその開設原資となっている。入居金は1人あたり1千万円が相場で、中には3億円という高額な物件もある。企業にとって、この入居金は次の物件の原資であるばかりではなく、入居後、数年にかけて売上高に計上できる。また、月々の費用は別途入居者の負担となり、自立できない入居者がいる場合、老人ホームは自治体の介護保険制度から決まった報酬を受けることが出来る。そのため、いつの間にか、「介護」=「老人ホーム」の図式が大手社のなかに浸透しつつあるのだ。

 しかし、私の思い込みかもしれないが、同社の採っているスタンスは違う。現在51ヶ所のデイサービス事業所を100ヶ所まで開設できるようピッチを上げるという。介護の理想であり、本質である、「家族と介護会社と足並みを揃えた介護」から外れることがない。

▼介護の到達点「エンゼルケア」
 また、同社は独自のエンゼルケアサービスというものを行っている。これは亡くなった方に、湯灌(ゆかん)、着付け、お化粧を行う、映画「おくりびと」そのままのサービスである。この湯灌について、社長がインタビューの中で「古くから仏典にある言葉」という表現を何度も使ったので気になっていたが、その謎は後日解けた。
 映画「おくりびと」は、本木雅弘が青木新門のベストセラー小説「納棺夫日記」を読んで感動し、映画化の許可を著者に直接求めたものであるが、シナリオを読んだ後に、青木は映画のタイトルを「納棺夫日記」から変更することと、原作として「納棺夫日記」の名前を出さないことを条件としたという。その理由として、後日、新聞社の対談で青木は「シナリオは素晴らしかったが、自分が最も訴えたかった宗教性について触れられていなかったから」と答えている。
 「湯灌」とは仏典の中で、家族やごく親しいものが亡くなった方の体をお湯で清めて、汚れのない浄化した体に仏衣を纏わせ、尊厳のうちに旅立たせることを目的としている。いわば、これは、家族の義務である。親族がいない場合は僧がこれを行ったという。

 「尊厳の中に生き、尊厳の中に死ぬ」そのために、湯灌を行うことは、家族とともに介護を行ってきた同社にとって、家族と行える最後の介護なのである。そのため、同社はこのエンゼルケアを「介護の到達点」と位置づけているのだ。福原社長が言いたかったのはこのことではないかと、今思う。

▼介護は、家族とともに
 ロング・インタビューの中で、社長が母親のお腹にいるときに出兵した父親が亡くなり、母親を楽にさせるためにとにかく起業したかったことが語られている。同社が掲げる2つの企業理念の一つが「私たちは、全従業員とその家族の幸せを追求します」である。“その家族”という部分に、同社の姿勢全てが窺える。介護は、やはり家族ありきだ。
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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?

 業績は決算短信を見ればすぐに確認できますが、企業を見るには「その企業がいかに社会にとって必要とされているか」「社会をよくしていく役割を担っているか」という視点も欠かせない、と「今日の1社担当」の私も感じています。
 今回も井上哲男が企業を見る、柔軟かつ温かい視座が大変参考になりました♪

 誰しもが迎える「親の老い」、そして「自分の老い」。
 人生の終わりを豊かで尊厳に満ちたものにしたいというのは共通の願いですね。そんな社会を支える企業として、ケアサービスには今後も期待したいと思います。

<関連リンク集>
■ケアサービス IR情報
■ケアサービス エンゼルケアを知っていますか
■ケアサービス 企業理念
■内閣府 高齢社会白書


代表取締役社長 福原敏雄様と。