8月15日、終戦記念日の「アサザイ 今日の1社」は、日進工具(6157・JQS)です!
「工具」と聞いて、皆様は何を想像されるでしょうか?
日進工具は、先日の予告でもご紹介した通り精密金型や部品加工を行うための切削工具「エンドミル」のメーカーです。その中でも「超硬小径エンドミル」に特化し、この分野で高いポジションを占めているんです♪
■日進工具 ウェブサイト
自動車関連・デジタル家電・電子部品関連など、さまざまなものづくりを支える日進工具。今回は代表取締役社長 後藤勇様に井上哲男が取材しました!
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取材後記
日進工具(6157)(JASDAQ)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は後藤勇代表取締役社長と田島寛執行役員。
▼後藤社長の魅力
昨年上半期の直木賞を受賞した池井戸潤の「下町ロケット」を読んだとき、私は同社のことを思い浮かべた。というのは、同社が2004年に上場した際に、私は海外の兄弟会社に同社のことを伝えるレポートを書いたことがあり、上場までのドラマのような沿革が強く記憶に残っていたのである。
そして、8年越しでお会いできた後藤社長は、頭の中で想像していた人物像と“嬉しくなるくらい違わない”人であった。「実直さ」、「誠実さ」、「人情味」、「笑顔」・・・。いろいろなものが自然と溢れ出ている魅力的な人物だ。
▼なぜ、超硬小径エンドミルか
切削用超硬工具と言えば、他に、ユニオンツール(6278)、日立ツール(5963)、オーエスジー(6136)の東証1部上場の3社を思い浮かべる人が多いと思う。証券各社が機械業種のレポーティングに力をいれていることもあり、個人投資家にも人気のある銘柄達だ。工作機械の先端に装着されて回転して切削を行う工具をエンドミルと呼ぶが、刃先の直径が6mm以下の超硬小径エンドミルの国内シェアで30%を超えるのが同社である。
“超”小径に特化する戦略は上場以来変わっていない。当時、超小径はニッチな分野と考えられていたが、「製品は全て小型化される。その際に必要となるものは超小径エンドミルだ」の信念で技術力を磨き、そして、これが当たった。携帯も、PCも薄く、小型になった。スマートフォンには携帯の1.5倍の電子部品が使用されている。車も“動く電子部品”と呼ばれるようになり、金型が小さくなり、同社のエンドミルのニーズはますます高まっている。名立たるメーカーを筆頭に取引先は4000~6000社にのぼるが、驚いたのが7000という製品数。顧客ニーズの数だけ製品があり、技術力とは、即ち顧客ニーズが高めるものなのだ。
▼「Made in Japan」と無借金経営
今回、同社の現状・業績を精査して感動を覚えたのが、上場した際に語っていた信念が“嬉しくなるくらい変わらない”状態で残っていたことである。上記の超小径エンドミル特化もそうであり、何よりも嬉しいのが「Made in Japan」のスローガンが変わっていないことである。
先代社長(兄)が亡くなり、後藤社長が社長となった91年はちょうどバブル崩壊時期と重なる。初の経常赤字に転落した年に、仙台工場を竣工し生産・開発資源をそこに集中した。先端技術の必要な製品は国内から出て行かないという読みの下、設備を集約した仙台工場でその国内の高い技術ニーズに応えていき、結果的に製品の評価が上がれば自ずと海外での注目度は高まるという信念を貫いてきた。上場時には達成していた無借金経営も守られている。
▼リーマン・ショックを越えて
リーマン・ショックが世界的に景気を冷ました結果、工作機器業界全体の戻りは決してシャープではない。前述の東証1部3社の前期売上高がリーマン・ショック前のピーク時からどのくらい落ち込んでいるかを数字にすると、41%、32%、16%と厳しい数字になるが、同社は1%とほぼ戻っており、今期の見込み(前期比+7.1%)で、他社に先駆けて上場来(創業来)のピークを更新する予定である。昨年度、3回の上方修正を行った同社のこの4-6月期(第1四半期)の決算は前年同期比で売上高が7.7%増、利益はそれぞれ30%以上の増と好調な滑り出しとなっており、ピーク越えの蓋然性は高い。
収録の中で私は「3社にあって、御社に無いのは知名度だけです」と厳しく聞こえる言葉を述べた。社長は「はい」と答えて頭を下げられたので驚いてしまったが、これは社長に向けてではなくリスナーに向けて述べたものだ。
言った手前、私もインターネットだけで4社の比較が出来るかを試してみたが、時間は多少かかったが可能であった。そして、この4社比較8期分で分かったことは、この3期間、売上高に対する各種利益率は同社がトップであり、期末時価による比較では、PERは8期連続、PBRは6期連続で最も小さい数字(同業比較で割安)であったということである。(ベンダーを使い数字は確認済み)
▼「IR宣言」
同社は今年3月に「IR宣言」を行い、個人株主が参加しやすいように総会も土曜日に移行した。質問は、ある限り全て社長が答えるという。「3月期決算銘柄2509社中、土日に株主総会を開催しているのは何社あるかご存知ですか?」との私の質問に、社長は「20%くらい(500社程度)ですか?」と答えた。そのくらいの数の企業が行っていれば、個人投資家の株離れは進まなかったかもしれない。答えは47社。50社に1社もないのだ。この47社のIRに対する姿勢は評価されるべきだと思う。
時はオリンピックのまっ只中。感動で私の中のナショナリズムが高まり、「Made in Japan」のスローガンにコミット(肩入れ)したわけでは決してないが、やはり思う。
日本には、応援したい企業が、まだまだ、まだまだ、たくさんある。(了)
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井上哲男の取材後記は以上です。いかがでしたでしょうか?
後藤社長には、実は「今日の1社」担当の不肖わたくしも、IPOの時期にお会いしたことがあります。人情味あふれる温かい方で、今回の取材後記での人物像は個人的にも頷けるところです。
当時、日進工具の本社がある立会川のおいし~い蕎麦屋に連れて行っていただきまして、お蕎麦はもちろんのこと、玉子焼きがフンワリ絶品だったのを覚えています。まだまだ若手と呼ばれる頃、「仕事が出来る方はこういうお店をご存知なのだなあ・・・」と、中庭の錦鯉をまぶしく眺めておりました。
あのお蕎麦屋さん、多分有名なお店だと思うのですが、また行ってみたいな~と思いました♪
なお、日進工具は、9月8日(土)開催、「ラジオNIKKEI&PRONEXUS共催イベント 第2弾・企業IR&個人投資家応援イベントin横浜」にも参加します!!
日進工具を含む4社のIRプレゼンテーションのほか、経済評論家の杉村富生氏の講演もありますので、首都圏の個人投資家の皆様は是非お越しくださいね♪
お申込み方法など詳細は、記事末尾のリンクをご参照くださいませ。
また来週の「今日の1社」もご期待ください!
<ご参考 関連リンク集>
■【9月8日・横浜】ラジオNIKKEI&PRONEXUS共催イベント 第2弾・企業IR&個人投資家応援イベントin横浜
■平成25年3月期 第1四半期決算説明資料
■日進工具 「IR宣言」