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「アサザイ 今日の1社」では、個人投資家の皆様になじみが深い企業から、専門的なBtoB企業まで、幅広い上場企業をご紹介しております。日常的に親しみのある企業への投資も面白いですが、専門性の高い分野に分け入っていくのも醍醐味があると思います。

 そんな企業との新しい出会いにアサザイが一役買えれば...と思いつつ、今回ご紹介するのは大阪の医療機器メーカー、大研医器(7775・東証一部)です!同社は主に麻酔関連、病院感染防止関連製品の企画開発・製造販売を行い、主力製品で高いシェアを有しています。
 今回は代表取締役会長の山田満さまにお越しいただきまして、井上哲男がインタビューしました。

 このバイオ関連銘柄を井上哲男はどう見たのか?取材後記をどうぞお読みくださいっ!
 
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取材後記

大研医器(7775)(東証一部)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役会長の山田満さま。

 

「医療機器はモノづくりニッポンの期待の星である」

 
▼強力な主力2製品

 「アサザイ」5社目のバイオ関連銘柄である。今年の1月、とある週刊誌の取材においてバイオ関連で3社を推奨して欲しいと言われた際に同社をその一つとして挙げたが、当時、同社株の動意は今ほどではなかった。しかし、近頃バイオ関連が賑わう際に一つの傾向がある。それは、実際に今まで高い成長を遂げてきた企業、また、売上高利益率や資本に対する利益率が既に高い企業の動意が高いということである。近頃の同社株の動きを見ていると個人投資家も非常に企業研究を行っていると感じる。

 

 「大研医器」。売上高に占める割合は「フィットフィックス関連」が60%、「シリンジェクター関連」が25%であり、主力2製品関連で85%を占める。

 「フィットフィックス」は手術中に出る血液・体液等の廃液を吸引して密閉容器で凝固するプラスチック製の凝固剤一体型吸引器のこと。従来の吸引器はガラス製で洗浄後に再利用されているため、医師、看護士に感染症のリスクがあったが、これが防げる。それまでトップシェアでこの分野の先駆者であった外資系メーカーは、大研医器がシェアを拡大していく過程で日本から撤退した。現在の国内シェアはおよそ70%。ダントツのトップであり、これ以上の拡大は難しいのではと感じられるかもしれないが、実はまだまだ伸びしろがある。というのは、現在でも65%がガラス瓶製であり、プラスチック製は35%しかない。70%のシェアはこのプラスチック製吸引器における数字である。医療機関における啓蒙が進んで、ガラス瓶製からプラスチック製への移行が進捗すればますます同社の売上げは伸びるのである。

 

 もう一つの「シリンジェクター」は手術後の痛みを軽減する麻酔関連の製品である。従来、この分野はバルーンの伸縮を利用したバルーン製が主力であったが、これでは正確な微量を継続的に投与することが困難であった。同社の製品は大気圧式であり、これを可能にした。同社の製品はPCA装置という、患者が痛みに応じてほんの微量の追加投与を自ら行うことにより痛みを和らげることが可能な機能もついている。この分野でも外資系メーカーを2010年に抜いてトップシェアとなり、現在は40%以上となっている。

 
▼7期連続の増収増益

 業績は極めて堅調。前期まで売上高、営業利益、経常利益が7期連続で最高を更新中で、今期は8期連続を目指している。取材の際に「少しずつ伸びているだけです」という殊勝な言葉があったが、この7期連続の増収増益企業がどのくらいあるかという質問を会長にぶつけたところ、「20社から30社くらいだと新聞で読んだことがあります」との答えが返ってきた。答えは25社。3500社以上ある上場企業のうち、それだけしか実現していないことを知っていながら謙虚な言葉を使っていたのである。30年継続して利益を出し続けてきた同社であるが、創業してから初めの17期は連続で赤字であったという。それでも信念を持ち続けて会社を続けた執念と支えてきたであろう周りの環境に対してただ、ただ頭が下がる。

 

 今年の3月に同社が研究担当者を現在の2倍の40人に拡大すると日経産業新聞が報じたところ、同社株は大きく上昇した。また、4月に安倍首相が成長戦略の一つとして(予想通り)医療分野を掲げ、UAEに「日本UAE先端医療センター」を、ロシアに「粒子線治療施設」の建設を官民共同で進めると表明したところ、直接同社に関連したことなのかどうかは不明ながらも同社株はストップ高水準まで買い進まれた。同社の開発力に対する市場の期待の大きさが分かる。

 現在の主力製品以外でも、心肺停止患者の蘇生率を高める咽頭冷却装置を承認申請中であり、外科手術、救急救命において患者の症状を迅速に判断するための機器の製品化などカタリストはたくさんある。

 
▼医療の「モノづくりニッポン」が世界に伍す日

 シードの浦壁社長と同じことを大研医器の山田会長は言った。それは日本の医療関連機器の年間貿易赤字が1兆円近いことに対する忸怩(じくじ)たる思いである。この30年間は「微細が求められる時代」であった。航空機器、自動車、電化製品、携帯電話、PC、これらの分野に求められた"微細な技術"に応えてきたのは日本である。医療機器はこれまで米国・ドイツの独壇場であったが、培われてきた日本の微細技術が活かされれば、会長の言われている「手術に関わる医療機器において日本製が世界に伍す日」が来ることは決して夢ではない。成長戦略に首相が第一に医療分野を掲げたのは非常に意義のあることなのだ。

 「バイオ関連」は「創薬ベンチャー」をはじめとして多くの事業を含むが、「医療機器」は「精密機器」、「電気機器」などと比較されるべきものであると考えている。同社の高い収益率が示すことは、この分野の付加価値の高さである。「モノづくりニッポン」に付加価値の高さを求めるのであれば、医療機器はその筆頭であるといえる。会長の掲げる高邁な理想が実現される日が必ず来ると私は考える。日本の医療機器メーカー全体への期待を込めてこれからも同分野をレポートし続けていく。(了)

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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 医療機器分野で、日本がチャレンジャーの立場として道を切り開いていくのが楽しみですね。世界の医療現場でメイド・イン・ジャパンが燦然と輝く日、その先陣を大研医器が切っていくことを、私も期待したいと思います♪

(関連リンク集)
■大研医器 株主・投資家情報

代表取締役会長の山田満さまと。
代表取締役会長の山田満さまと。