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「医療」は、人類の歴史とともに進化してきました。かつては不治の病とされたものに治療法が見いだされたり、治療法があっても肉体的な負担が厳しかったものが改善され、よりいきいきと生活できるようになってきたり、その可能性は大きく広がっています。
 8月28日放送の「アサザイ 今日の1社」では、そんな医療の最先端にあって活躍するカイオム・バイオサイエンス(4583・東証マザーズ) 代表取締役社長の藤原正明さまにお越しいただきました!

 カイオム・バイオサイエンスは、独自の抗体作製技術により、創薬企業における「抗体医薬品」の 迅速な開発に貢献する創薬ベンチャーです。たいへん専門的な分野ですが、放送中では井上哲男のインタビューに応えて、わかりやすく事業内容をご説明いただきました。
 井上哲男の取材後記が届いていますので、どうぞお読みくださいっ!

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取材後記

カイオム・バイオサイエンス(4583)(東証マザーズ)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締社長の藤原正明さま。

 

「膨らむ期待」

 
▼進歩する「バイオ医薬品」

 放送のおさらいになるが、この会社のことをより理解して頂くために医薬品の説明から再度行う。薬には2種類がある。主に化学合成で作られる低分子医薬品とバイオ技術によって生産されるバイオ医薬品であり、現在、医者にかかった時に処方される経口薬はほとんどが低分子医薬品と思ってよい。一方で世界的に急速にその開発が進められているのが後者のバイオ医薬品である。

 バイオ医薬品には組み換えDNA技術によるタンパク質性医薬品、遺伝子治療に用いる遺伝子組み換えウイルス、培養皮膚などの細胞性治療医薬品、オリゴ核酸などの核酸医薬品、そして、現在これからの開発速度で最も期待されている抗体医薬品などがあり、カイオム・バイオサイエンスはこの抗体医薬品に関わる事業を行っている。

 

 どんな薬にも残念ながら副作用はある。たとえ医者が処方した薬が、その患者さんに効かなかったとしても、である。低分子医薬品とバイオ医薬品の大きな違いは、前者が対症療法であるのに対して後者は原因療法(原因物質を特定してそれに対して作用する)という直接的な根本治療に役立つものであるということである。これは、低分子医薬品に比べて影響を及ぼす細胞が少なく、副作用が少ないということにも結びついている。また、特徴としてバイオ医薬品はタンパク質からできていることが多く、経口では服用しない。

 タンパク質でできている薬を経口で服さないことは、インスリンの投与が糖尿病治療において注射で行われることで分かるであろう。このインスリンであるが、私が大学4年生の時に「ヒトインスリン」が認可されたのが日本におけるバイオ医薬品の始まりであった。それまでウシやブタから作っていたインスリンを、ヒトとブタ、ヒトとウシではごく少数のアミノ酸の配列が違うことが発見されて完全にヒトと同じアミノ酸配列のインスリン精製に成功したのだ。当時、副作用の減少が期待されるという記事を読んだ覚えがあるが、そのことによるかどうかは分からないが、実際に当時は街を歩いていても糖尿病を患っている人は顔色で分かったが、現在はそのような人を見かけなくなった。その後、ガンやC型肝炎の治療に用いられるインターフェロンなども実用化され、バイオ医薬品の進歩はめざましいものとなっている。

 
▼「ADLibシステム」によるビジネス構造

 カイオム・バイオサイエンスが抗体医薬品において何を行うかであるが、これにはまず同社の持つ「ADLibシステム」という創薬基盤技術について説明しなくてはならない。ヒトは強い生き物である。なぜ強いかというと、抗体タンパク質が強いのである。そして、この抗体は本来ヒトの体を作っていないタンパク質に対しては猛烈に手を伸ばして掴む(つまり攻撃する)性質があり、ウイルスや細菌を異物タンパク質(抗原)として認識するのだ。一度スズメバチに刺された体内には、その毒に対して抗体ができる。そして、再度刺されると、その毒(抗原)に抗体が猛アタックをするので、アレルギー・ショックを起こす場合がある。これほど抗体は強いのである。番組の中で、社長は「ADLibシステム」を「釣りをしているようなもの」と言ったが、それは、エサを抗原と認識させて特定の抗体に手を伸ばして掴まえさせるということである。そして、抽出された抗体を培養して創薬に活かすのである。

 

 セグメントは3つ。製薬会社の新薬開発に「ADLibシステム」を使用して共同研究という形で一緒に携わる「創薬アライアンス事業」については抗体医薬御三家である中外製薬と既に6年行っている。続いては「ADLibシステム」の技術を貸し出す「基盤技術ライセンス事業」。こちらについては富士レビオ(現在はSRLと統合して「みらかホールディングス」(4544))が近い将来、新たな診断薬の認可を受ける可能性があるという。「ADLibシステム」の技術から初の製品が生まれる記念すべき瞬間である。そして、3つ目の事業が「リード抗体ライセンスアウト事業」。同社自ら「ADLibシステム」を使用して選抜し医薬としての可能性を満たした候補抗体を製薬会社に提供するビジネスである。

 同社がこれから最も力を入れようとしているのが、最後の「リード抗体ライセンスアウト事業」。そのため、今期中に「完全ヒトADLibシステム」によって「完全ヒト抗体」を作ることを目指している。有効な資金調達も行えたことから、これにまい進することに期待したい。その後は様々な抗体を「釣って、培養して、提供(出荷)する」というビジネス・サイクルに入ることになる。

▼見守るなら、長期の視点で

 そのため、現在は四半期決算で一喜一憂する対象の会社ではないことを投資家には伝えたいと思う。同社の新中期経営計画によると、平成28年3月期にとてつもなく大きな飛躍を見込んでいる。その計画によると売上高が4354百万円、最終利益は1718百万円、実に売上高最終利益率は39.46%にもなる見込みだ。

 この39.46%という数字がどのくらい凄いかというと、昨日時点での上場全社(3500社強)の今期の売上高最終利益率見込みで第7位の数字になる。また、上位3社は特別利益の計上見込みによるものであり、実質的には第4位となるのである。

 これほどの数字ではないにせよ、少しでも黒字化した場合は、同社のモデルは拡大期に入ったと判断できると思う。黒字化に向けた蓋然性は他のバイオ・ベンチャー企業に比べて高いと私は現在のところ判断している。それでも3年以上の長期投資は必要である。

 メディシノバさんの取材後記にバイオ・ベンチャーに投資するには、まず自分が同産業に対して投資をする資質があるのかどうかを、本を読んで考えて欲しいと書いた。その考えに変更はない。そして、もう1つ加えるとしたら、そのバイオ・ベンチャー企業が理想としているものに共感できるかどうかを考えることである。カイオム・バイオサイエンスが目指すのは「副作用のない完全オーダーメイド医療」。私はこの理想に強く共感する。(了)
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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 「すこやかに生きること」、これは人類共通の願いだと思います。副作用の少ないその可能性を切り開いていくカイオム・バイオサイエンスの今後の活躍に、是非期待したいと思います! 理想に共感できる企業を探すのも、投資の醍醐味ですね。

 「今日の1社」では引き続きさまざまな企業をご紹介してまいりますので、どうぞお楽しみに!

(関連リンク集)
■カイオム・バイオサイエンス 投資家情報
■「よくわかるカイオム・バイオサイエンス」

(代表取締役社長 藤原正明さまと。)
代表取締役社長 藤原正明さまと。