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 6月10日の「今日の1社」にご紹介した日東精工(5957、東証1部)は、そんな「ねじ」をつくるリーディングカンパニーです。

 とても身近にあるけど、普段その存在を意識することは少ないですよね。ペン先ほどの小さなねじも、日本の「モノづくり」を根底から支え、産業の発展に大きく貢献しているのかと思うと、感慨深い思いがします。

  さて今回、井上哲男から取材後記が届いておりますので、ご覧下さい。

 

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取材後記

日東精工 (5957) (東証1部)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の材木 正己様。

 

「 匠の技 」

 
▼きちんとfastenする技術

 番組の中でもご紹介したが、「工業用ファスナー」とは"精密ネジ"のこと。無論、[ fasten=しっかりとくっつける、留める ] が語源である。輸送用機器(自動車)や電気機器が主力の顧客であるが、ネジとは、「ネジ」の部分と「それを締つける工程及びその機械」に分けられる。そして、その両方を提供できる世界唯一のメ-カーが同社である。「ネジを知りつくしているから締めつけ作業工程の機械ができる」と社長は語ったが、その両方を知りつくした結果、同社は「検査・計測」の部分まで提供する企業となった。ワンストップとはまさしくこのことである。

 

 同社が現在、この工業用ファスナーの分野で力を入れているのが「セルフタップ」をメーカーに導入してもらうこと。これは、ナットなどのいわゆるネジを受ける側がなく、小さな穴さえあれば、ネジが入り、きちんとfastenすることができるという技術である。海外の自動車メーカーは先行してこの技術を採り入れているが、国内での採用はやっと始まったばかりという。ネジ単体のコストは全体の15%程度で、他は締めつけ工程にかかる費用であることを考えると、企業のコストダウンにも大きく寄与する技術である。製品の軽薄短小化は世界の流れであり、それが日本の多くの技術によって支えられている。同社の工業用ファスナーもそのひとつであることは間違いない。

 
▼産業用機械メーカーとしての一面

 私がもうひとつ強く伝えたいのが、産業用機械メーカーとしての同社の一面である。映像などでご覧になった方も多いと思うが、アームドライバーもその製品群のひとつで、東南アジア、特にタイの自動車工場で活躍している。また、造船業界にとって同社の流量計である流体計測器の存在は欠かせないものであり、"欠かせない"といえば、番組の中でも紹介したように、現在大きな問題となっている地盤調査の機械で国内90%のシェアを誇る「ジオカルテ」も同社の製品である。

 

 社長がこれらの産業用機械の中で、うれしそうに語ったのが「マイクロバブル洗浄機」のこと。化学洗剤を用いないこの製品は環境負荷低減に役立つ。本当に京都らしい会社である。「"匠の技"でモノを作る」、「世の中、環境保全に役立つモノを作る」、「モノづくりはヒトづくり」と3つのキーワードを社長は語った。全て合わせると、「"匠の技"で世の中に役立つ人を育てる」ということになる。

 
▼人生の『ねじ』を巻く

 無理やりのこじつけのような印象を持つかもしれないが、それは違う。昨年5月に同社企画室が「人生の『ねじ』を巻く77の教え」という本をポプラ社から上梓した。発売から1ヶ月で3刷となり話題となったが、この本は社員育成マニュアルのエッセンス本である。ひとつ欠けたら大変なことになるネジ。この本の冒頭には、

「 ねじとは

  モノとモノとをつなぐもの。

  ねじによってモノがつくられ、

  モノを介して人と人とはつながります。

  私たちがつくるねじは、

  心と心を締結する、そんな役目を担っています。 」

とある。

 一気に読んだ。というよりも止めることができなかった。fastenされた印象である。本の最後、77番目の教えに「ありがとう」のチェックリストがある。そうでなくても涙腺の弱い私は家で読んでいて本当に良かったと思う。凄い本である。なぜ、一企業の一企画室がこれだけの本を出せるのかと考えてしまった。是非お読み頂くことをお薦めしたい。この会社が日本に生まれ、存在していることに感謝と、そして、誇りを感じるであろう。

 

 地方や東京郊外の工場や本社を訪問する機会がある。工場を実際に訪れて作業している人にふれ、そしてその街を歩くと、言葉ではうまく表せないが、その企業の持つにおいや風合いがなんとなく理解できることがある。

 京都府綾部市にある同社を本当に訪れたいと思う。「全部、自前の機械ですよ」収録を終えて帰りしなに社長は、照れくさそうに、その日一番の笑顔で語った。(了)

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 取材後記は以上です。いかがでしたか?

 

 さすが「ねじ」の会社です!人の心もキュッとつかんで、つないで離さないようですね。
 今回、ロングインタビューでは、モノだけではなく、社会や人をつなでいく活動についてお話を伺いました。後日、配信されますので、こちらもお楽しみ下さい。

 

 それでは、来週もお楽しみに!!

 

(関連ウェブ)

■日東精工 IRサイト

代表取締役社長 材木正己さまと
代表取締役の材木さまと