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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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5月29日放送の「アサザイ 今日の1社」では、またまた元気な企業をご紹介しました!
 今回スタジオにお越しいただいたのは、博展(2173・JASDAQグロース) 代表取締役会長兼社長の田口徳久さま。同社は1967年の創業以来、展示会等のディスプレイを中心に実績を積んできました。現在ではディスプレイの企画・制作にとどまらず、展示会にかかわるクライアントのニーズを総合的に支援する「コミュニケーション・デザイン」の領域に事業を展開しています♪

 放送中では拾いきれなかった、同社の定性的な部分を中心に井上哲男が取材後記をまとめましたので、どうぞお読みくださいっ!

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取材後記

博展(2173)(ジャスダック・グロース)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役会長兼社長の田口徳久さま。

 

「博展を選んでくれた社員全員に幸せになってもらいたい」

 

▼思わず、落涙
 番組収録時刻の30分前に、プロネクサスの担当者から博展の追加資料が届いた。慌てて打ち出しをしてスタジオに持ち込んだのであるが、それは「私の履歴書」という、どこかで見たことのあるタイトルの社内報向けの連載文章であった。

 

 「博展」。乃村工藝社さんの取材後記で書いたように、私は大学時代に広告をやっていた関係で、総務省の産業分類で「イベント会社」に振り分けられる5社については個人的な興味もあって見てきた。博展のホームページも何度も見た。センスのあるホームページで、株主・投資家情報のカテゴリーもとても見易いので好感を持っていた。ここ3年間ほど業績も絶好調で、定量的な面からのサポートも可能なことから、収録も、この取材後記もスムーズに進むと思っていた。

社長に実際に会って、お人柄を感じるまで、また、「私の履歴書」を読むまでは、だ。

 

 私は涙もろい。家族は知っているが、テレビを観ていてもボロボロと泣く。「24時間テレビ」や「大家族モノ」などは大変なことになる。しかし、さすがに日経新聞に掲載されている「私の履歴書」を読んで泣いたことはなかったが、博展の社内報に連載された社長の「私の履歴書」を読んで泣いてしまった。

 

▼これまでの「苦労」と「感謝」
 社長の生まれは昭和31年。私の6歳年上である。どういう時代であったかは、映画「三丁目の夕日」の設定が、その真ん中の昭和33年であることから推測できるであろう。野球しかなかった少年時代、学校群制度で振り分けられた都立高校への入学、大学を卒業できない夢をよく見ることまで社長と私には共通点がある。そういえば、社長の母校、都立両国と柔道の試合をして、ものの数秒で押さえ込まれた記憶もある。

 

 社長は「私の履歴書」の中で、赤裸々に全てを語っている。生い立ち、学生時代のアルバイト先から就職したリクルートで得たもの、父親が5人ほどの大工と始めた装飾会社を継いだ経緯、新卒の採用、営業部隊とデザイナーの雇用と神田事務所の設立、人数が増えてきた後の営業部隊と製作部門の軋轢、銀座への進出、上場への苦難、等々。

 その中で語られているのは、全て社員への愛情と感謝である。「博展を選んでくれた社員全員に幸せになってもらいたい」、社長の思いは母親から厳しく言われた「社員の皆様に感謝の気持ちを伝えるために挨拶をしなさい」という教えが続いているものであろう。そのDNAはきちんと社員に伝わっているはずだ。この会社は間違いなく強い。

 

 番組の中で、代理店経由の受注が2割で、クライアントとの直接取引が8割という話がサラリと出たが、「私の履歴書」の中では、そこまでの苦労が語られている。初めは当然、代理店経由の仕事の受注が主で、営業部隊が直接取引のコンペを取ってきても、それに代理店が参加している場合は辞退していたのであるが、悔し涙を流す営業マンの姿を見て直接取引の道を進もうと社長が腹をくくったのである。

 洒落たホームページの博展、モ-ターショーを始め、あれだけ綺麗でワクワクさせるブースを作る博展にこのような歴史があったとは全く想像していなかった。やはり企業の定性は懐に入らなくては分からない。

 
▼定量分析で見る博展

 ここまで定性を書いておいて、私の定量分析など「いまさら」という感もあるが載せさせて頂く。

( 2006年度を100とした2012年度の数字 )

<売上高>:金融を除いた29業種合計:92.4、サービス業:104.6、イベント5社合計:102.6、博展:155.3

<経常利益>:金融を除いた29業種合計:72.1、サービス業:116.8、イベント5社合計:86.8、博展:162.5

<最終利益>:金融を除いた29業種合計:60.3、サービス業:162.3、イベント5社合計:49.3、博展:181.7

( 収益率 2012年度 )

<売上高経常利益率>:金融を除いた29業種合計:4.7%、サービス業:7.4%、イベント5社合計:3.0%、博展:7.7%

<売上高最終利益率>:金融を除いた29業種合計:2.2%、サービス業:3.9%、イベント5社合計:1.8%、博展:4.4%

 

▼応援したい会社
 学生時代、手掛けたイベントの中で一番大きかったものは、某テレビ局のスポーツ部開設何十周年の記念企画を通したことだ。横浜を舞台に世界初の国別対抗女子駅伝を行ったのである。「世界初、日本発」というコピーも採用された。スポンサーは何度も替わったが、少なくとも昨年まではその大会は続いていたはずだ。そこまで入り込んでいたのに、なぜ金融に行ったのか。乃村工藝社さんの取材後記では言葉を濁したが、実は、製作が大好きであったのだが、広告代理店の大人達のことがあまり好きではなかったのである。彼らはあまり真面目ではなかった。

 「私の履歴書」は、当時私が大好きだった製作の世界、製作の会社は、やはり好きになるのに充分に足る業界であったのだと改めて教えてくれた。感謝している。

 ほら、日本には、応援したい会社がまだまだたくさんある。(了)

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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 「定性」と「定量」、これまでにも何度か出てきたキーワードです。企業の懐に入る「定性」、企業を冷静に分析する「定量」の両面の視座をもつこと、まさに井上哲男の真骨頂ですね~。

 社長のパーソナリティとそのDNAをうけつぐ社員のみなさんは「人的資産」であり、同社が40年以上にわたって積み上げたクライアントとの信頼関係は「顧客資産」です。財務諸表にはあらわれないこれらの「見えない資産」に目を向けることは投資をする上でもたいへん大切なポイントかと思います。

 応援したいと思える企業を、今後もご紹介していきたいと思います!

(関連リンク集)
■博展 株主・投資家情報
■5月14日付適時開示 平成 26 年3月期~平成 28 年3月期 中期経営計画( 新規 )

代表取締役会長兼社長 田口徳久さまと。
代表取締役会長兼社長 田口徳久さまと。