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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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 6月6日の「アサザイ 今日の1社」はセルシード(7776・東証JQG)を放送しました。
 
 今回は、代表取締役社長 橋本 せつ子様にお越しいただき、事業内容・事業分野・経営戦略について詳しくお話を伺いました。

 同社は、細胞シートによる再生医療のバイオベンチャーです。
「日本発の細胞シート工学を基盤とした治療法を世界中の患者さんへ一日でも早く届けたい」という思いのもと、細胞シート再生医療製品の事業化に向けた取り組みを続けています。

 2017年 4月には、台湾の店頭公開企業であるメタテック社と台湾での細胞シート再生医療事業の導出へ向け事業提携契約を締結しました。台湾における承認取得・販売に向け、メタテック社の細胞シート製造・開発のサポートを行います。今後も、アジア諸国・欧米への細胞シート再生医療事業展開を目指し取り組みを続けてゆきます。

 井上哲男より取材後記が届いております。ぜひご覧ください。

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取材後記
セルシード (7776) (東証ジャスダック・グロース)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は、代表取締役社長の橋本 せつ子(はしもと せつこ)様。

「今年最も嬉しかったニュース」

▼「食道」と「軟骨」の分野において、細胞シートによる再生医療の事業化を進める
 再生医療の支援事業会社として上場し、丸8年が経った。
 再生医療とは、失われた臓器や損傷あるいは機能が低下した臓器を再生して治療する先端の医療のことであるが、同社は、"組織に似た細胞シート"を作成して、それを損傷した箇所に移植し、臓器、組織を再生させる研究・開発を行っている。

 この細胞シートを作成して移植することを「細胞シート工学」と呼ぶが、この「細胞シート工学」は、東京女子医科大学の岡野光夫教授が発明した日本発・世界初のプラットフォーム技術であり、具体的には、温度応答性ポリマーで表面を加工した細胞培養皿で細胞を培養し、温度を変えるだけで、細胞外マトリックスを保持したまま有機的に結合した「細胞シート」を培養皿から回収することを可能とした画期的な技術である。

 この「細胞シート」を用いた再生医療の適用範囲として考えられる組織・臓器としては、角膜、歯、耳、肺、心臓、肝臓、膵臓など、非常に広いが、現在、同社は、「食道」と「軟骨」の分野において、細胞シートによる再生医療の事業化を進めている。

 まず、「食道」であるが、食道がんは、年間、約22,000人の日本人がそれと診断され、年間約11,500人が死亡している。男性の発症率が女性の5倍と高く、また、5年生存率は男性が36%、女性が44%とがんの中では生存率が低い。また、食道がんの約90%が扁平上皮がんである。

 近年、この手術において、内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが、ESD後には、食道狭窄という副作用が起きる。分かり易く言うと、"皮がツレる"という状態だ。

 「食道再生上皮シート」を用いた場合、上皮があるため、この"ツレる"症状が緩和される。
 この「食道再生上皮シート」は、食道がん再生治療法として東京女子医大先端研が開発した治療法であるが、患者の口腔粘膜から採取した細胞から温度応答性培養皿を用いて細胞シートを作成し、食道がん切除内視鏡手術後の食道潰瘍面に移植するというものである。

 そして、この「食道再生上皮シート」が、現在、治験進行中であり、製品化への道を歩んでいる。
 東京女子医大と開発基本合意契約があり、東京女子医科大学、長崎大、欧州のカロリンスカ大学病院などで、臨床研究症例があり、2016年夏に治験が開始され、2017年2月に厚生労働省より「先駆け審査指定制度」の対象品目指定を受けた。

 また、「軟骨」の分野については、変形性膝関節症という病気がある。これは、緩やかに進行する治癒の困難な関節軟骨変性である。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている。高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患である。

 「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科 佐藤正人教授との共同研究を行っているものであるが、健康な自己軟骨細胞を採取し、それから細胞シートを製造し、欠損した軟骨部分にシートを移植するというもの。今年、東海大学が先進医療を申請し、細胞シートの受託加工を当社が有償にて実施する予定である。

▼メタテック社と事業提携契約を結ぶ
 同社は、昨年4月に台湾の店頭公開企業であるメタテック社と事業提携契約に調印し、事業パートナーとなった。

 メタテック社は、台湾における、食道再生上皮シート、軟骨再生シートの再生医療事業における独占的な開発・製造・販売権を得たことになるが、開発進捗に応じて、マイルストーン収入、開発サポート料がセルシード社に入ることにより、今後複数年で、最大12億5千万円程度を受領することを予定している。同社の黒字化への道のりがこのようにして開け、ついに今年度からの黒字化を予定している。

 この海外事業展開として、同社は台湾・メタテック社の支援を引き続き強力に行いながら、アジア諸国・欧米をターゲットに、年1件程度を目標として、(海外事業の)提携先獲得を目指すという。

▼中期経営計画を発表
 同社が今年、この黒字化も含めた中期経営計画を発表したのが2月14日のバレンタイン・デーのこと。
 これまでも、バイオ・ベンチャーについてセミナーなどで語るとき、同社を紹介してきた私は、「やったなセルシード!」と非常に感慨深いものがあった。今年、これまで企業が発表したプレスリリースのなかでも最も嬉しかったニュースと言っても過言ではない。

 ただし、厳しい言い方を敢えてするが、同社が社会から期待されている使命は、「食道再生上皮シート」、「軟骨再生シート」の治療を確立し、新たな「細胞シート」の適用範囲である臓器の再生に向けたチャレンジを続けていくことにこそある。黒字化は、それに向けた大きな力添えではあるが、同社が歩んでいく道の中で、ほんの初期のマイルストーンでしかないのだ。

 私が言うまでもなく、同社がそのことをきちんと認識されていることを今回の収録で知ることができた。それだけで十分だ。私が出来ること、すべきことは、これからも同社の歩み、進捗を正確に伝えていくことだけである。ずっと応援している。
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取材後記は以上です、いかがでしたか?

本日の放送はオンデマンド配信にて早速アップされております。是非お聞きください。

それでは来週もお楽しみに!

(関連ウェブ)
セルシード IRサイト
■アサザイ(2018.6.6送分)


代表取締役社長 橋本 せつ子さまと