お知らせ:

朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

番組へのお便りはこちら
エレクトロニクス商社というと、社名はカタカナが含まれる企業が多いのではないかと思います。
 8月13日放送の「アサザイ 今日の1社」でご紹介したのは、その名も漢字2文字のエレクトロニクス商社・丸文(7537・東証一部)です! 

 丸文の創業は170年前、呉服問屋を起源としていまして、その後業態転換をはかり現在にいたります。その中でも「常に時代の一歩先を見据え、次のニーズに応える」ことを理念とし、日本で初めて集積回路(IC)の輸入販売を開始するなど半導体供給のパイオニアとしても活躍してきました。

 今回は代表取締役社長水野 象司様にお越しいただきまして、同社の強みや中期計画の取り組み等についてお話いただきました。
 インタビュアーの井上哲男から取材後記が届いていますので、是非お読みください!

----------------------------------------------------------

取材後記
丸文(7537)(東証1部)
ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の水野象司様

「先見・先取のDNA」

▼織物問屋の先見と友情
 慶応義塾大学の三田キャンパスの一角に、歴史を感じさせる赤レンガの図書館がある。そして、この建物が意外なことに丸文とつながりがある。

 日本で初めて集積回路を輸入した独立系のエレクトロニクスの専門商社である丸文。この事業としての設立は1947年であり、既に67年という歴史があるが、そのルーツは江戸時代の1844年に堀越角次郎が現在も本社を構える日本橋(大伝馬町)で絹織物・綿織物の問屋を始めたことにまで遡る。
 「丸文」はその屋号であるが、もし、そのままの問屋でいたら、江戸時代末から明治初期において、多くの織物問屋がそうなったように、淘汰されてしまったかもしれない。しかし、下田・函館がペリー来航によって開港したのに続き、日米修好通商条約によって、神奈川(開港とともに横浜に改名)が開港されると聞くや、横浜支店を設立して貿易を行ったことが、「丸文」をさらに大きくしたのである。実は、ここで動けたかどうかが、その後の織物問屋の栄枯を決定する分水嶺となった。動いた問屋の動機は明白である。米国の開国要求の意図は、捕鯨船の給油基地確保と米国の紡績業・綿織物業の相手先探しの2つだけであったのだから。

 但し、この時代の商人が外国と貿易を行うということは、言葉の問題だけではない困難を伴った。その最も厄介なものが『攘夷論者』である。「尊王(皇)攘夷」の「尊皇」は理解できるが、「攘夷」という言葉の意味はひとことでは片付けられない。それぞれの者が持っている「攘夷」の解釈を巡って、多くの藩が争い、また、手を組んだほどである。そして、この時代に「攘夷」という言葉の解釈に最も苦しんだ一人が福沢諭吉であったと思う。この言葉を嫌い、この言葉の意味を自分の中で折り合いをつけることが出来なかったがゆえに、福沢諭吉は自ら政治的な活動を行うことはせず、また、吉田松陰のように塾生に政治的な活動をさせることもしなかったのだと、私は考えている。堀越角次郎と福沢諭吉は親友である。堀越角次郎は赤レンガの図書館を諭吉に寄贈し、諭吉は角次郎の墓誌銘を刻んでいる。二人に共通していることは、当時の一般的な解釈で「攘夷」という言葉を捉えなかったことである。

▼卸売のROE
 例によって、定性部分が長くなった。
 番組でお話ししたように、今週、来週と卸売業が続く。そのため、2週に亘って、卸売業を見るポイントを書こうと思う。

 卸売業はROEの加重平均が非常に高い業種である。それは、ROEが利益/自己資本(株主持分)であり、分母に借入金が入らないからである。卸売業は、情報通信やサービス業のように利益率が高い業種ではない。そのため、借入れを行うことによってレバレッジをかけ、売上と利益の増大を目指す財務行為は理に適っている。これが奏功すれば結果的にROEは上昇することになるのであるが、無論、この前提にあるものは、財務の健全性がきちんと達成されていることである。

▼肉体改造の成果
 丸文は、中期経営ビジョンとして、「持続的な成長が測れる筋肉質な企業の実現」を掲げている。12年3月期と前期末(14年3月期)を比べると、負債比率は255%から181%へと減少しており、その2年間で財務活動によるキャッシュフローは146億円ものマイナスになっている。つまり借入金の圧縮を行ったのである。この財務活動によるキャッシュフローのマイナスが本業の好調さからきていることは、ROEがこの間、3.1%から5.6%に上昇していることに表れている。実際、最終利益は10億円から20億円に倍増し、経常利益も同じように24億円から40億円に大きく増加している。
 この結果、営業利益に受取利息等を加えた事業利益を支払利息等の金融費用で除したインタレストカバレッジレシオは4.4倍から10倍に拡大している。10倍という数字は、財務面での余裕、金利負担能力を測るうえで、卸売業や電気業(電力会社等)といった借入れの大きい業種、企業において「極めて安全」の尺度となる数字である。まずは、財務面における、「筋肉質な企業の実現」は着実に進んでいると考えられる。

 さて、事業戦略上の重点施策であるが、「デバイス事業」、「システム事業」それぞれにおける、国内外の重点施策を掲げているので、ホームページの「投資家情報」→「IRライブラリー」→「決算説明会」→「2013年度通期(プレゼン資料)」でご覧頂きたい。
 これを見るとこの会社の"投資家に対して親切な部分"が分かる。通常のパワポの資料の下に、各ページで、言葉で説明する部分をそのまま掲載してくれているのである。話題となった、「フォトニック結晶プロセスインテグレーションシステム」は18ページに、そして、農地を利用して行う太陽光発電「Solar営農」(「そらぁ、ええの~」のダジャレネーミング。。。)は15ページで説明が行われている。

▼受け継がれるDNA
 攘夷論者に屈することなく、横浜開港でいち早く米国と貿易を行った丸文。日本ではほとんどその名を知られていなかったテキサス・インスツルメンツと1965年からつながりを持ち、後に日本に初めて集積回路を輸入した丸文。水野社長は中期経営スローガンの「Think & Action」に加えて、「先見、先取」という言葉を使った。これこそが、この会社の輝くDNAである。意識すべきは、同業とともに先人である。(了)
----------------------------------------------------------
 
 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 今後の中期計画の進捗も、注目していきたいと思います♪

 次回の「今日の1社」も、お楽しみに!

(関連リンク集)
■丸文 ウェブサイト

代表取締役社長の水野象司様と。
代表取締役社長の水野象司様と。