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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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日本の人口のうち、75歳以上の高齢者が占める割合は増加を続けており、2055年には25%を超える見込みです。
 その中でも先行して高齢化が進んでいるのが東京23区とされており、今後・・・というよりは現在すでに日本が直面している課題になっています。

 ご両親の介護をされている方から聞いた、印象に残っている言葉があります。
 「介護は『何とかなる』というくらいにしか思っていなかったのですが、今の状況になってみるとまったく『何とか』はならないです。」
 これからの日本にあって、介護はあらかじめ考えておくべきことであり、またそれを支えるサービスが必要ということかと思います。

 4月16日放送の「アサザイ 今日の1社」では、介護サービスを東京23区でドミナント展開する、ケアサービス(2425・東証ジャスダックグロース) 代表取締役社長 福原敏雄様に出演いただきました!

 介護保険法改正や市場ニーズの変化などに対応して事業を発展してきている同社は、2013年1月9日以来2回目の出演となりました。
 早速インタビュアーの井上哲男より取材後記が届いていますので、どうぞお読みください♪

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取材後記

ケアサービス(2425)(東証ジャスダック・グロース)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の福原敏雄様

 

「家族」

 
▼「介護」の現状とこれから

 番組の中でも話したが、上場企業であるから当然と言われればそれまでであるが、利益率の高さを問うべきなのかどうか疑問を感じる業種があることを感じている。それは「介護」と「人材派遣業」だ。

 

 介護事業を語る前に、まず必要なことは社会的な現在の介護福祉の状況、背景の理解だ。2010年の国勢調査によると、65歳以上の高齢者人口は約3000万人、15歳から64歳までの生産年齢人口は8200万人とその比率は1:2.73、つまり一人の高齢者を2.73人が支えている状況であった。この生産年齢人口は当然労働人口ではない(学生なども含まれる)ため、実質的な数値はもっと低いことに注意が必要であるが、これからの人口推移について政府が用いる機関である国立社会問題・人口問題研究所の見込みによると、2025年には高齢者人口が3600万人にまで増加し、一方で生産年齢人口は7000万人にまで減少することから、その"支え比率"は1.94人にまで低下するという。

 また、高齢者のいる世帯率は1986年の6.3%が2009年には20%を超えているが、その2009年時点で高齢者の3割が単身世帯で、3割強が夫婦2人世帯となっている。これに伴い、高齢者の介護をしている人に占める高齢者の比率もおよそ三分の一にまで上昇している。これが「老老介護」の実態なのである。

 しかし、このような状態になることを政府が想定していなかったかというと、それは違う。政府も予め、生産年齢人口が減少に転じる時期を1995年と見越して介護保険の導入を図ったのである。政府が一つだけ見誤ったことは、バブル崩壊後の不況期間とその後のデフレ期間の長さであり、それが深刻な財政負担に結びついたのである。

 
▼"介護を受ける側の目線"

 番組の中で、「初めから介護をしていた会社と、事業セグメントとして介護を加えた会社」の違いを述べたが、それは厳しい言い方をすると、"介護を受ける側の目線"をどう意識しているかの違いに結びついているのかもしれない。

 政府は公的な特別養護老人ホームの入居者を昨年2月時点で47万人、待機者が40万人と明らかにしている。それだけ多くの待機者がいながらも建設をすすめられないのは、建設に関わる費用もさることながら、その後の入居者に関わる公的な負担金額が大きいことが理由として考えられる。これについては一人あたり、月額27万円にものぼるとされている。

 

 このような状況でケアサービスは、入居者の経済的な負担の小さい、介護サービス付き賃貸住宅をさいたま市に3ヶ所開設している。"賃貸"というところが鍵である。他の民間による所謂"老人ホーム"の平均入所金は1000万円とも言われている。これが"目線"の違いなのである。

 
 この「介護サービス付き賃貸住宅事業」が売上げの5%であり、(ここでは説明しないが、前回の取材後記で詳しく述べた)「エンゼルケア事業」が20%、そして「介護事業」が残りの75%を占める。そして、これら三つ全てのセグメントにおいて、介護を受ける人、それを支えている人の目線を強く意識した事業を行っていることが、ケアサービスの尊さなのである。

 
 この姿勢は会社説明資料にも表れている。

 社長は放送の中で数字の説明の際に、「総務省、厚生労働省、各地方自治体の資料から算出した」と話されたが、一つの数字を求めるのにも非常に困難を極める。冒頭に挙げた数字も、実は私も昨年の夏に集中して介護に関する数字を集めた結果、得られた数字である。

 ケアサービスの会社説明資料は、きちんと介護事業を巡る環境、その中で同社が求められていること、そのニーズに沿った事業展開が分かるものとなっている。作成にはどれだけの苦労があるかと思う。それゆえ、同社を知ってから、私は他社の説明資料で、「××事業」の売上げは低調であったが「介護事業」は堅調・・・というように、抱える多くの事業の一つとして数字を説明するだけの資料をみると悲しみを覚えてしまうのだ。

 
▼まず、家族ありき

 業績の堅調さは番組の冒頭で述べた。この11年間で同業の売上高が2倍に伸びたのに対して同社は3.4倍、営業利益が同業の伸びが1.8倍であるのに対して同社は6倍。しかし、この業界の利益率は、それだけをとってみると他業種に比べて決して胸をはって"高い"とはいえないことも確かである。

 しかし、同社は厳しい環境の中で利益を上げ、そして、それを従業員にきちんと還元して介護従事者の離職率の低下や5年継続率の上昇につなげたい、何よりも従業員とその家族の幸せにつなげたいと考えている。前回も書いたが「介護はまず、家族ありき」だ。そして、その家族という範囲を、同社は介護を受ける人、その介護を身内で行っている家族だけでなく、従業員という会社にとっての家族、そして、その従業員の家族と考えているのである。このことを、株主になる方はまずは理解して欲しい。

 

 私も、私なりに昨年夏から数字を調べてきて、深い問題意識を持ったのが、この離職率なのである。一時、さかんに広告でも流れていた大学や専門学校の介護福祉の入学者、志願者も低下を続け、辞める学校さえも出ている。高齢者の増加という"確かなこと"に対して、介護を行う人間の増加も"確かなこと"になるように行政が早急にイニシアティブを執ることが必要である。ここでは詳しくは書かないが、現在は逆の状態である。

 

 最後に、リスナーの方に今回のロングインタビューを聞いて頂くことをお願いしたい。実は、この会社の礎を作ったのは、社長ではなく、社長のご尊母なのである。一人の人間が自分の子供に見せる姿勢が、結果的に社会にどのように大きなものを与えられるかが分かる。私も再度聞く。二人の子供とともに。(了)

 

出典

・「安心と信頼のあるライフエンディング・ステージの創出にむけて」(2011年8月)経済産業省

・「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)国立社会保障・人口問題研究所

・「介護保険事業状況報告」(2013年2月、3月月次)厚生労働省

・「日本国勢政図会」(2007年版、2010年版、2013年版)矢野恒太記念会

・「県勢」(2007年版、2010年版、2013年版)矢野恒太記念会

・「世界国勢図会」(2006/2007年版、2012/2013年版)矢野恒太記念会

・日経新聞2013年8月18日朝刊

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 今回の取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 放送中、落ち着いた語り口で事業展開をご説明される福原社長に、ケアサービスの足元の堅実さを感じました。

 取材後記中で紹介されている会社説明資料は、下記のリンク集から是非ご参照ください♪

 また来週の「今日の1社」もお楽しみに!

(関連リンク集)
■ケアサービス ウェブサイト
■ケアサービス 2013年12月3日 中期成長戦略説明資料(PDF)
■ケアサービス 2013年1月9日放送分の取材後記

代表取締役社長の福原敏雄様と。
代表取締役社長 福原敏雄様と。