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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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日本は総じて豊かな国であり、国土のすみずみまで物資が常に運ばれ続けています。私たちが日頃お店で手に取る商品なども、欠品が無いように店舗のニーズに合わせて常に物流が動き続けているのです。
 毎週お店に行って、当たり前のようにそこにあるドリンクを買う。日本は産油国でなくても、全国どこに行っても石油が手に入る。普段は意識することがあまりないかもしれませんが、最近の大雪などで、物流の大切さをあらためて感じた方も多いのではないでしょうか。

 2月19日放送の「アサザイ 今日の1社」は、そんな日本の物流を支える東部ネットワーク(9036・JASDAQスタンダード)です!
 東部ネットワークは、横浜市を主要な拠点とする総合物流企業。創立70周年を迎える歴史の中で、食料品・石炭等の輸送に始まり、その後石油類・硝子びん・清涼飲料水・セメントの輸送や商品販売事業など、事業領域を広げてきています。

 今回は代表取締役社長の芦原一義様にお越しいただき、井上哲男インタビューに答えていただきました♪
 同社のバリュエーションにも注目した井上哲男の取材後記をお読みくださいっ!

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取材後記

東部ネットワーク(9036)(東証ジャスダック・スタンダード)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の芦原一義様

 

「陸運業におけるバリュエーションの齟齬(そご)」

 

▼3週連続「イノウエ・セレクト」
 結果から述べる。3週連続でNISA向け「イノウエ・セレクト」シールを貼る。

 運送会社が東証業種分類で「陸運業」に属することは投資家であれば誰もが知っている。日本の貨物運送の9割以上は自動車、つまりはトラックで行われているが、総務庁の産業分類上の「一般貨物自動車運送業」で上場している企業数はちょうど30を数える。このくらいあると分析のしがいがあるのだが、皆が抱いている企業イメージと収益率の優劣にギャップがあることもこの業種の特徴といえる。

 この業種で売上高の大きい5社といえば、「日本通運」、「ヤマトホールディングス」、「日立物流」、「セイノーホールディングス」、「センコー」であるが、実はこの5社は営業利益、経常利益、最終利益をそれぞれ売上高で除したところの利益率で上位5位にいずれも入っていない。売上高最終利益率の上位5社(前期決算)を挙げると、「南総通運」、「サカイ引越」、「東部ネットワーク」、「ハマキョウレックス」、「丸全昭和」と中堅が並ぶのである。

 
▼バリュエーション・ギャップ

 「陸運セクター」は、全業種(指数構成)対比のバリュエーション評価が正当に行われていないのではないかという疑問を10年以上抱いてきたが、それだけではなく、陸運セクター内においても相対的なバリュエーション評価がされていないと感じる。

 それはPER、PBRという評価の入り口のような指標からも分かる。この東部ネットワークのPBRは昨日2月18日の終値ベースで0.30倍と同業30社の中で下から3番目である。これが財務内容に不安のある会社であれば別であるが、同社は30社のうち3社しかいない無借金会社で当然デットエクイティ・レシオはゼロである。因みに同業のデットエクイティ・レシオの平均は80%程度であり、東部ネットワークのバリュエーション評価は「不当」のような気さえする。

 以前、私はこの取材後記で2社について同じことを述べた。「シード」と「コメ兵」のときである。そして、その後、2社の評価は正常なレベルに戻ったことを考えると、やはり、シールを貼りたい。しかし、「シード」や「コメ兵」のときのように短期間でそれが行われるかというと時間はかかると思う。なぜならば、前述したように「陸運セクター」自体の全業種(指数構成)対比でのバリュエーション評価の補正も必要だからである。

 
▼ピンチをチャンスに変える経営

 東部ネットワークの「東部」とは「横浜東部」のことである。地域性の強い運送会社であったことが分かる。それではなぜ、その地域性の強かった、そして規模が決して大きくなかった会社がここまで収益性も財務健全性も高い企業になれたかの答えを、私は同社が創立70周年記念に作った冊子の中に見つけることができた。

 リーマン・ショック翌年である2009年6月の神奈川新聞の社長インタビュー記事によると、芦原社長が社長に就任して4年目の2004年に、神奈川県のある大手百貨店が、同社に任せていた配送を関東圏全体を対象にした入札に切り替えた結果、契約を解除されたという。

 社長は、その対応として配送拠点を大幅に縮小するなどの経営の見直しを図るとともに、営業所を回って全国展開の必要性やトラックの大型化の必要性を説いて回ったという。当然、転勤も増えるし、それまで百貨店担当であった運転手は新たな資格の取得も必要になることも説明したが、社員の反応は良かったという。「危機感を共有できた。チャンスに変わるかもしれない」そう感じたという。

 

 その後の戦略は、番組の中でも紹介したようにトレーラーによる一回あたりの輸送量の拡大や最適なコースや品目、数量をコンピューターで計算させる自動配車システムの導入、一業種の動向に業績が左右されないための多品種配送、そして全国展開の拡大などである。

 今から3年前、同社は富山県砺波市に東部北陸物流センターを、神奈川県海老名市に東部海老名物流センターを竣工した。これらは一貫物流の拠点である。百貨店の契約が解除されてから7年。社長の胸にはどのような想いが去来したであろうか。

 
▼「アサザイ」で伝えたい、知られざる魅力

 以前、「アサザイ」と他のIR番組の違いや使命感のようなことを書いたことがあったが、今回もそれを痛感した。時価総額の大きい企業に偏重する証券会社のアナリスト・レポートに取り上げられない上場企業のおよそ三分の二の企業、全上場企業対比や同業対比で優れた経営指標やグロース数値を持っていながらそれに自身が気づいていない企業、自身の定量的な数値を知りたいと思い、それを公開企業としての責務でIRにつなげたいと考えている企業。それらの企業のために「アサザイ」はある。

 今回同社の個人投資家向け資料に、輸送経済新聞の数字から作ったグラフを載せているのを見た際に私は少しグッときてしまった。こういうまじめな努力をする企業に、「こんなもんじゃないですよ、御社のバリュエーション上の魅力は。まだまだありますよ」と言ってあげたい、実際にその定量的な数字を示してあげたいのである。また、感謝している。こういう企業があるから、私は毎回定量分析を充分に行ってから収録にあたるというモチベーションを保つことが出来るのである。

 

 今後、同社はIRにさらに力を入れるつもりだという。その資料を私は見て、もしかしたら平気でダメ出しをするかもしれない。しかし、それは同社の魅力を分かっているからこそである。

IRの目的は、公開企業として業績・経営指標をきちんと開示し、その業績にふさわしい株価にすることである。バリュエーション評価の改善を考えた際には、そこに業種内の比較数値の開示も有効であろう。同社の業績、そしてIRの姿勢をずっと見守っていきたいと強く思う。
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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 取材後記中にある「個人投資家様向け説明会資料」は末尾にリンクして置きましたので、どうぞご参照ください。マーケット情報以外にも、「なぜトレーラー車なのか?」など、極力わかりやすく説明されていると思います。

 「アサザイ 今日の1社」では、井上哲男の得意とする定量分析もまじえつつ、出演企業の魅力をお伝えしています。取材後記にもあるとおり、企業自身がその優位性や魅力にお気づきでないケースも確かによくあります♪

 およそ3,600社にもおよぶ上場企業には、そんな「知られざる魅力」をもった企業がまだまだたくさんあります。今後も是非、そんな魅力をご紹介できればと思います!

 また来週のアサザイもお楽しみに~。

(関連リンク集)
■東部ネットワーク ウェブサイト
■2013年6月11日 東部ネットワーク 個人投資家様向け説明会資料

代表取締役社長の芦原一義様と。
代表取締役社長の芦原一義様と。