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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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昨年9月26日放送の「アサザイ 今日の1社」で「伝説のMBO企業」としてご紹介したのが、JCU(4975・東証一部)でした。。
 JCUは、荏原製作所・荏原インフィルコ・米国ジ・ユージライト・コーポレーションの共同出資により、1968年に「荏原ユージライト」として設立。2003年にMBOにより独立したのち、2005年に東証二部上場、2007年に東証一部指定を受け、業績も順調に伸ばしてきました♪

 同社はめっき加工を行うための表面処理薬品と機器を提供しており、自動車、建材、水栓金具、電子部品、半導体など大変幅広い製品の加工をサポートしています。海外売上高比率も高く、スマートフォン・自動車などをはじめ、世界のテクノロジーを支えています。

 昨年ご出演の直後、2012年10月1日に商号を荏原ユージライトから新たに「JCU」に変更され、さらなる飛躍が期待されていた同社。約1年3ヶ月ぶりに代表取締役会長兼CEOの粕谷佳允様にお越しいただきまして、その後の経過もお話いただきました。
 インタビュアーは勿論、井上哲男。またまた渾身の取材後記が届いていますので、お読みくださいっ!

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取材後記

JCU(4975)(東証一部)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役会長兼CEOの粕谷佳允様。

 

「歓び(よろこび)の歌」

 
▼海外での芽吹き

 昨年9月以来、2回目のご出演。前回ご出演頂いた際に割安感を強調したが、2500円程度であった株価はその後順調に上昇し、約半年で倍以上となった。2回の上方修正で、業績の堅調さに市場がやっと焦点を当てたイメージであったが、今期も第2四半期決算で通期の上方修正を発表したことから、株価は3800円レベルから1ヶ月かけて5300円まで、ちょうど40%程度上昇し、今週に入って5000円台でもみ合っている。しかし、それでも割安感が強い。

 

 この会社の決算発表を見る際のポイントはやはり海外での業績である。3期前には40%程度であった海外売上高比率は、現在は60%程度にまで拡大している。今期の第1四半期(4-6月期)の決算発表が大きなサプライズの無いものであったが、同社は「1-3月期の海外(中国・韓国)でのスマートフォンの生産調整がこの期の数字に表れている。これは既に分かっていたことで、4-6月期は生産調整が終わり、予定通り立ち直っている」という主旨のコメントをきちんと述べている。つまり、4-6月期の海外の数字が反映される第2四半期での好業績はある程度予測できたのである。

 

 その予想の一つの根拠となったのが、自動車関連が第1四半期から好調であったこと。電気機器と自動車関連の売上比は、かつて5:5程度であったものが、ここ数年はスマートフォンが業績を牽引する形で6.5:3.5程度となっていたが、今期は5.5:4.5にまで自動車が戻している。

 スマートフォンに関しては、国内メーカーよりも海外メーカーとの繋がりが強く、アップル、サムスンの2大メーカーに加えてシェアを伸ばしている中国メーカーにも納入しており、自動車に関してはその逆で国内の全てのメーカー(含む部品メーカー)に納入している。海外への自動車メーカーの進出についても共同で装置を開発し、その装置の納入後はそれに使用する薬品の納入というストックビジネス・モデルで強力にサポートしている。海外売上に加えて、この電気機器、自動車の両軸の売上推移でこの会社の業績はかなり測ることができる。

 

 また、前回に新規事業として話していた、太陽光パネルの設置・販売事業、台湾での化粧品販売は既に始まっており、中国・台湾で納入が始まった「貴金属めっき事業」(それまでのニッケルと金によるめっきではなく、ニッケルとパラジウムと金の無電解めっき(ニッパラ金)により、金の含有量を低下させてメーカーにコスト削減をもたらす)や「ノーシアン金」の研究開発(金めっきはどうしても有毒なシアンを使用するが、新しく開発した薬品を使用することにより、このシアンを使用せずにめっきを施すことが可能となる)、ICチップとパッケージ基盤を接続する工法として従来の「(金)ワイヤボンディング」に替わる「カッパー(銅)ピラーの技術」など、次から次へと世界が同社の技術を必要とする予備軍に溢れている。

 
▼定量分析で際立つ成長力

 番組でも披露した定量的な数字をここでも述べる。いざなみ景気最後の決算期である2006年度を100として、その7期後である今期の売上高を表すと、金融を除く29業種が94、化学全体が106、めっき薬品の同業5社が77という厳しい数字となっているが、JCUは165と1.6倍以上に伸長している。経常利益については、29業種が88、化学が92、同業5社が30とやはり厳しいなかJCUは238と、2.4倍にもなった計算だ。

 特にこの差が顕著となったのがここ4年間。ちょうど10年前にMBOを行い、国内の大変な作業をこなしながらも海外へ積極的に進出したことが果実を生んだ形である。会長は当時を振り返って「毎月、海外に1ヶ所拠点を作るペースでがんばった」と言っていた。

 

 昨年番組収録時に会長が言われていた「技術開発力と市場開拓力」の「市場開拓力」はこの時に蒔いた種が育ったものであり、「技術開発力」は現在の新規事業でも分かるように常に次のニーズに備えて研究開発に力を注いできた結果である。

 
▼「ステークホルダー」へのまなざし

 前回、株主優待まで含めた還元率の高さについて触れたが、その後、会長と話していて、とても感銘を受けることがあった。それは、「当社の一番大きなステーク・ホルダーは、弊社の取引先企業様、株主の皆様、弊社の従業員とその家族の3つであると考えており、必要な内部留保、研究開発費以外の部分を均等に分配したいと考えている。取引先企業様については、その企業様と共同で薬品を開発する際にかかる費用という形で、そして株主の皆様には配当金と株主優待という形できちんとお答えしたい」というものであった。

 

 単に「株主」という意味で「ステークホルダー」という単語を用いる企業があるが、私はとても違和感を覚える。「株主」は「シェアホルダー」や「ストックホルダー」であり、「ステークホルダー」とは、会社がその利益や生活、環境に影響を与える全ての人達や団体のことを示している。一例を挙げると、その企業の工場が立地する地方自治体も立派なステークホルダーである。

 「ステークホルダー」の意味を正しく理解して還元する。この会社が「きちんとしている」と感じられるのはこういう部分にも表れるのである。

 

▼「歓びの歌」が、きこえる
 最後に、ホームページを見ることをお願いしたい。会長がその中で10年前のMBOから上場、海外進出について回顧している。ベンチャー・キャピタルをして「伝説のMBO」と言わしめたMBOだ。

 大好きなJCUには私が一番好きな言葉がピッタリあてはまる。それは「涙とともに種を蒔く者は、歓びの歌とともに収穫する」という聖書の言葉である。JCUの歓びの歌は、まだまだ止まない。(了)

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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 昨年の取材後記でも、JCUの業界比較も踏まえて「価値ある上方修正」をご紹介しました。その後も海外等にまいた種が着実に芽吹き、堅調な業績を維持しているところですね~。

 放送は10分あまりなのですが、収録は実はもっともっと長い時間、お話をいただいています。その一端はロング・バージョンでご紹介したいと思いますので、アップされましたらぜひお聴きください!


(関連リンク集)
■JCU 投資家情報

代表取締役会長兼CEOの粕谷さまと。
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