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朝イチマーケットスクエア「アサザイ」

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「ベンチャー企業」への投資というのは、将来性に期待をして資金を投入するわけですが、それにあたっては投資する会社の今の姿を見て、5年後、10年後の姿をイメージできるかどうかがポイントです。成長ストーリーをいかに示していくか、それを支える「ベンチャー・スピリット」をいかに保ち続けるかが、ベンチャー企業の経営者にとっては重要なテーマとなります。

 今回の「アサザイ 今日の1社」は、「将来性投資」の最たる「創薬ベンチャー」の草分け的存在、アールテック・ウエノ(4573・ジャスダック・スタンダード)の代表取締役社長 眞島行彦様にお越しいただきました!
 インタビュアー・井上哲男が取材後記であらためて同社の強みを分析してくれましたので、どうぞお読みください!

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取材後記

アールテック・ウエノ(4573)(東証ジャスダック・スタンダード)

ラジオNIKKEIスタジオで取材・収録。お相手は代表取締役社長の眞島行彦様。

 

「"創薬ベンチャー"としてのアールテック・ウエノ」

 

▼創業時からの収益基盤
 今年2月に、フジサンケイビジネスアイ(日刊工業新聞社)が主催する第8回バイオベンチャー大賞の審査員特別賞をアールテック・ウエノは受賞したのであるが、その審査委員長のコメント要旨を披露すると、「数多いベンチャー企業の中でも収益基盤をしっかりと確立しつつ、現在有効な治療薬が確立されていない疾患向けに世界初の治療薬を開発する新規性や着眼点は高く評価でき、今後の新薬開発に期待する」とある。同社のことを語るのに充分で、無駄のないコメントである。

 

 アールテック・ウエノの創業は1989年。創業者の上野博士の特許管理会社としてスタートした。上野博士は上野製薬で緑内障治療薬レスキュラを開発した後に製薬ベンチャーを立ち上げる目的で渡米し、設立したスキャンポ社は便秘薬アミティーザの開発に成功している。(米国スキャンポ社も上場会社)

 アールテック・ウエノは上野薬品からレスキュラの製造・販売事業を継承した後にアミティーザの受託生産事業も開始し、このレスキュラ、アミティーザという両輪の好調さに支えられて2004年までに強固な財務基盤を築くことに成功した。そして、2005年から創薬事業を開始したのである。このことから分かるように、他の創薬ベンチャーとは創薬開始時の財務状況が違うという強さがある。

 
▼堅調、足許の決算

 同社は前期まで8期連続で3利益ともに黒字の企業であることが何よりも安定した収益基盤を築いていることの証明であるが、現在上場している企業のうち8期の決算が遡れるのが3338社あり、うち1314社がアールテック・ウエノと同じように3利益とも黒字を続けている。これらの企業の8期平均売上高経常利益率、同最終利益率を計測すると、アールテック・ウエノは前者については全体で30位(29.98%)、後者が22位(20.64%)となる。医薬品業種で見ると前者が2位、後者が1位である。

 

 足許の決算も好調だ。レスキュラ、アミティーザの2本柱であるが、さすがに来年、上市されて20年となるレスキュラは後発薬も出ていることから毎年の売上減は避けられないが、それでも眞島社長の言葉ではないが"よく健闘している状態"である。

 また、昨年32年ぶりに日本で便秘薬の新薬として認可・販売が開始されたアミティーザは絶好調。日本での売上通期寄与に加えて、納入価格が引き上げられたこともあって、売上が大きく伸長しており、今期の会社決算は前期に比べて、売上高で15.5%、営業利益で61.2%、経常利益で54.5%、最終利益で61.3%のそれぞれ増加を見込んでいる。第1四半期終了時点で通期の上方修正も行った。

 

 アナリストレポートであれば、この好調な決算状況の報告と来期、再来期についてもアミティーザの伸びが収益をひっぱることを述べて、新薬の認可(売上寄与)が無くても1株利益はこのように成長する見込みと書けばよいであろう。

 しかし、私が同社について語りたいのはそんなレベルのことではない。このレベルのことであれば、取材後記の下にレポートのURLを貼り付ければ済むことである。

 
▼「創薬ベンチャー」としての真価

 厳しいことを書く前に予め断りを入れるが、私は昔からアールテック・ウエノに注目し、個人的に大いに期待してきた。今回の収録も事前のヒアリング・メモが来る前に台本を送ったほどである。その私が今回のインタビューで確認したかったことは、実はレスキュラ、アミティーザのことではなかった。しかし、社長が数回、"来年"、"これから"、"勝負"という言葉を呟いたことにより確認することは何もなくなったといえる。

 厳しい言い方をすると、レスキュラ、アミティーザは厳密には"創薬ベンチャーとしてのアールテック・ウエノ"の功績というよりは医薬品会社としての功績である。しかし、"創薬ベンチャーとしてのアールテック・ウエノ"は現在、夜盲、視野狭窄などの症状である網膜色素変性の治療薬である「オキュセバ」(UF-021)が申請前のフェーズ3に来ており、失明することもあるドライアイの治療薬「RU-101」はフェーズ2まで進んでいる。また「RK-023」は男性型脱毛症治療薬としてフェーズ2、睫毛貧毛症治療薬としてフェーズ1の段階と、とても期待が膨らむ状態まできている。これからが本当の意味での同社の社会的な存在価値が大きく増大する時期なのである。

 

 「ベンチャー」というと、多くの人は資本(キャピタル)の面から見たステージのレベルを考える。無論、それは間違ったことではないし、その点でアールテック・ウエノは最上のレベルにあると思う。しかし、「ベンチャー」にはもっと必要なことがある。

 それはスピリットとしてのステージである。社長の呟きは、レスキュラ、アミティーザにあぐらをかかない、あくまでも「アンテメット・メディカル(未だに満足のゆく治療法がない医療)」、「オーファンドラッグ(希少疾病医薬品)」、「アンチエイジング、生活改善」に立ち向かう姿勢を表したものである。網膜色素変性は日本の患者数は3万人、世界で100万人と言われているが、患者さんに対しては大変失礼な言い方にはなるが、新薬開発という観点からはオーファンドラッグに入る。しかし、"日本発・世界初の薬"でこの疾病に立ち向かいたいという思いは、上野博士と慶應義塾大学医学部で同窓として学んだ、眞島社長の医師としての目線や苦悩そのものであろう。株主総会にこの疾病で苦しむ方が株主としていらっしゃったと社長から聞いた。確認したかったスピリットとしてのレベルにおいてもアールテック・ウエノは最上にいることが何よりも嬉しい。

 

 アベノミクスから1年。第3の矢(成長戦略)について色々な議論があるが、産官学連携による医薬品分野での方向性は間違っていないと確信している。インタビューを終えて、ますますアールテック・ウエノが好きになった。ほら、日本にはまだまだ応援したい企業がたくさんある。(了)

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 取材後記は、以上です。いかがでしたか?
 堅実な財務基盤を持ちつつ、創業以来のベンチャー・スピリットを有するアールテック・ウエノ。これは井上哲男ならずとも応援したくなってしまいますね~♪ 現在治療法が確立されていない病気、患者数が少ないために医薬品の開発が進みにくい病気などに有効な新薬が、同社の手によって世の中に登場してくる日を期待したいと思います。

 また創薬ベンチャーというと「わかりづらい」という印象も強いと思いますが、同社のウェブサイトはなるべく「強み」や「成長戦略」などがわかりやすいようにコンテンツが工夫されていますので、どうぞご参照くださいね♪

(関連リンク集)
■アールテック・ウエノ 投資家のみなさま
■アールテック・ウエノの強みを読み解く ※ナレーション付き

(代表取締役社長 眞島行彦さまと。)
代表取締役社長 眞島行彦さまと。